🌟試練の時:半導体洗浄の世界トップ、SCREENホールディングスが挑む稼ぐ力と生産性向上の大改革!

半導体製造装置のリーディングカンパニーであるSCREENホールディングスが、創業から151年を迎える令和元年に大きな試練の時を迎えています。同社は、半導体の製造工程で極めて重要な「洗浄」分野において世界最大手として長らく市場を牽引してきましたが、2019年3月期には2度の業績下方修正を余儀なくされました。さらに、足元では米中貿易摩擦という大きな逆風にも晒されています。このような状況下で、明治元年に創業された老舗企業が、いかにしてこの難局を乗り越え、持続的な成長を遂げられるのか、そのものづくり改革に大きな注目が集まっているのです。

同社の再起をかけた取り組みが、主力工場である滋賀県彦根市の彦根事業所で始動しました。これは「彦根グランドデザイン」プロジェクトと名付けられた、製造現場の抜本的な改善を目指すものづくり改革です。その中核となるのが、13年ぶりとなる半導体関連の新たな生産棟「エス・キューブ」の建設と稼働です。この新棟では、村田機械との連携のもと、工場における省人化を3割以上達成し、製造の納期を半減するという非常に意欲的な目標が掲げられています。

新棟への自動化技術の導入は目覚ましいものがあります。具体的には、部品の搬入時に仕分け機を介した自動搬送システムや、自動倉庫、さらには工場内の天井を走行する無人搬送車(AGV)といった最先端の設備が採用されています。これらの自動化設備は、半導体メーカーでは導入例があるものの、半導体製造装置業界においては画期的な取り組みといえます。周辺工場への設備導入を含めた総投資額は約90億円にも上り、この改革によって2020年3月期には「数十億円レベルで原価低減に貢献する」(沖勝登志常務)見込みであり、同社の収益力向上に向けた本気度がうかがえます。

SCREENホールディングスの強みは、半導体の基材であるウエハーを洗浄する装置で世界シェア最大手である点にあります。特に高速で高精度な洗浄が可能な「枚葉洗浄装置」においては、実に4割もの世界シェアを誇ります。半導体受託生産の世界最大手台湾積体電路製造(TSMC)や、米国のインテルをはじめとする世界の主要な半導体メーカーと強固な取引関係があるものと見られています。そもそも、半導体の製造には成膜など数百もの工程が存在しますが、そのうち3分の1が洗浄工程とされており、「洗う」装置の効率性が、最終的な製品の生産性を大きく左右します。同社は、この洗浄装置に経営資源を集中投下し、技術を磨き上げることで、半導体業界に欠かせない「洗いのプロ企業」としての地位を確立してきたのです。

順調に成長を続けてきた同社ですが、2018年夏、サプライチェーンマネジメントに大きな異変が生じました。当初、2019年3月期は過去最高益を見込んでおり、受注額も記録的な水準にありましたが、肝心の基幹部品が品薄となってしまったのです。その結果、納期を優先するために高価格品を調達せざるを得なくなり、これが大幅なコスト増を引き起こしました。この混乱が響き、2019年3月期は約130億円の減益要因となり、最高益予想から一転して連結営業利益は2018年3月期に比べ約3割の減益へと落ち込みました。

さらに、同社が抱える構造的な課題の一つが「利益率の低さ」です。2019年3月期の売上高営業利益率を比較してみると、ライバルである東京エレクトロンが24%、アドバンテストが23%、ディスコが26%と、半導体市況が調整局面にある中でも2割以上を維持しているのに対し、SCREENは8%にとどまっています。「これまで利益マインドが低く、安易な値引きなどがあった可能性がある」(国内大手証券)という指摘もあり、これは一時的な問題ではなく、経営体質そのものに根差した課題である可能性が示唆されています。

スポンサーリンク

技術畑出身の新トップによる改革断行

この創業151年の試練の年に、改革の陣頭指揮を執るのが、2019年6月25日の定時株主総会を経て社長兼最高経営責任者(CEO)に就任される広江敏朗氏です。広江氏は、同社の主力である半導体製造装置の開発を長年担当されてきた、まさに技術畑のエキスパートです。

実は、この改革への地ならしは、前任の垣内永次氏によって行われてきました。垣内氏は2016年に、非創業家としては初のCEOに就任し、2014年に移行した持ち株会社制のもとで、各事業の自律性を高め、それまで利益マインドが低かったとされる経営体質の改善に尽力されました。しかし、垣内氏が掲げた営業利益率「13%」という目標は、残念ながら達成には至りませんでした。

新社長となる広江氏には、ものづくり改革を通じてライバル企業と同水準の収益力を身につけることと同時に、現在の主力事業である半導体やディスプレーに続く新規事業の育成という、二つの大きな使命が課せられています。広江氏は、「グローバルニッチを狙う企業でありたい」と語り、規模は小さくても競争力の高い事業を複数持つという多角化戦略を描いています。

持続的成長に向けた課題の一つがM&A(合併・買収)の推進です。2018年には、米ファンド傘下にあった旧日立国際電気の半導体部門の買収を検討されました。この部門はSCREENに比べ利益率が高く、同社の洗浄装置と同様に半導体の前工程に必要な薄膜装置を手掛けていました。しかし、提示された買収価格が2,500億円と、同社が想定していた2,000億円とは開きがあったため、断念されました。2010年代前半には半導体製造装置業界で大型再編の動きが相次ぎましたが、再編の機運はくすぶっており、中堅勢による再編を予想する見方もあります。広江氏も「案件があればオープンに検討する」と、M&Aに対する積極的な姿勢を示されています。

米中摩擦の懸念と市場の回復期待

足元の懸念材料として、米商務省による華為技術(ファーウェイ)への制裁措置が挙げられます。米ゴールドマン・サックスが2019年5月29日付で公表したレポートでは、この禁輸措置がSCREENホールディングスの営業利益を5%押し下げると試算されました。この影響は、アドバンテストへの影響(11%押し下げ)と比較すると小さいと見えますが、野村証券の和田木哲哉アナリストは「5Gなどが先送りになると、半導体メーカーが設備投資に慎重になる」と、中長期的な影響を懸念されています。

一方で、IoTや5Gといった次世代技術の普及によって、中長期的には半導体市況が回復に向かうという楽観的な見方も多く存在しています。この追い風が吹いた時、同社が高収益企業へと変身できているかどうかが、今後の大きな分かれ目になるでしょう。しかし、洗浄装置をめぐる競争環境は厳しく、世界第2位の東京エレクトロンがシェアを約25%まで高めており、改革にかけられる時間は決して多くはありません。

私見ですが、SCREENホールディングスは、写真製版で培った卓越した精密技術を基盤に、半導体製造というニッチながらも不可欠な洗浄分野に特化することで、世界トップの座を築き上げてきた企業です。そのDNAには、明治から平成にかけて創業家が幾度も苦境を乗り切ってきたという強靭な精神が受け継がれているに違いありません。技術畑出身の広江新社長を中心とする新しい経営陣には、彦根事業所の改革のような地道なカイゼンの積み重ねに加え、M&Aも含めた大胆な構造改革を断行し、老舗ならではの技術力と新しい経営マインドを融合させることで、再び世界市場で輝きを放っていただきたいと強く期待しています。

(SCREENホールディングスは、半導体材料のウエハーを洗浄する装置の世界最大手です。1868年(明治元年)に京都で「石田旭山印刷所」として創業されました。1934年には日本企業として初めて写真を製版するガラススクリーンの製造に成功し、そこで培った技術力が現在の事業の礎となっています。1970年代に半導体製造装置事業に参入して以降、半導体製造工程の**「洗浄」分野に経営資源を集中させ、技術を磨き、現在では半導体関連事業が連結売上高の7割**を占める主力事業となっています。)

コメント

タイトルとURLをコピーしました