円相場の「適正価格」はいくら?日経・日経センター算出の「日経均衡為替レート」が示す驚きの理論値と利下げリスク

日本経済新聞社と日本経済研究センターは、経済のファンダメンタルズ、すなわち基礎的条件に見合った外国為替相場の水準を示す**「日経均衡為替レート」**を独自に算定いたしました。この最新の分析によりますと、2019年1月から3月期の円相場の理論値は、1ドルあたり107円20銭、すなわち107円台前半と試算されているのです。この均衡為替レートは、様々なマクロ経済指標から見て、無理のない為替水準を示す尺度であり、相場が経済実態に比べて「割高」なのか「割安」なのかを客観的に判断するための重要な指標となるでしょう。

実際の円相場は、2015年頃から理論値よりも円安、つまり「割安」な状態が続いてまいりましたが、直近では均衡水準へと接近しています。事実、2019年6月25日には一時、約5ヶ月半ぶりに106円台後半まで円高に推移しました。これは、世界経済の先行き不透明感から、各国が金融緩和へと舵を切る動きが強まっていることが背景にあります。特に、米連邦準備理事会(FRB)が6月19日に「成長持続のために適切な行動をとる」と発言し、利下げを示唆したことは、大きな影響を与えていると考えられます。一方、日本銀行の黒田東彦総裁も追加緩和の可能性に言及していますが、日本の金利低下余地は乏しい状況です。そのため、日米の金利差縮小観測から、投資家の間で円を買い、ドルを売る動きが活発になっているようです。

この均衡為替レートという考え方は、為替の国際的な議論においても大変重要です。例えば、トランプ米大統領は貿易相手国の通貨政策を厳しく批判することが多く、米財務省は日本を監視対象国に指定しています。また、米国は貿易交渉で通貨安誘導を制限する「為替条項」を求めているのです。しかし、この日経均衡為替レートの推計を見る限りでは、現在の円相場が経済実態から著しくかけ離れた「意図的な通貨安」の状態にあるとは言いがたい状況であると言えるでしょう。

過去を振り返りますと、2010年から2014年の円相場は適正値よりも「割高」であった時期があり、この間に政府と日銀が実施した大規模な円売り介入にも、一定の正当性があったと解釈できる面もあります。その後、2015年以降は「割安」に転じ、この状態が定着していました。これは、景気拡大によって政府債務の拡大が鈍化したことや、原油価格の下落などで国内企業物価が低迷し、結果として均衡レートが上昇した一方で、実勢相場の上昇が緩やかだったためです。一部では、日銀の「異次元緩和」が円安につながりにくくなってきた一因とも考えられています。

スポンサーリンク

FRBの利下げが招く円高圧力と人民元の「過小評価」の可能性

では、均衡レート近くまで上昇してきた円相場は、今後、どのように動くのでしょうか。もし米国が利下げ局面に入ると、さらなる円高圧力が生まれるでしょう。均衡レートの推計式に2回分、すなわち0.50%の利下げを単純に当てはめて試算すると、1ドル105円90銭が理論的な「妥当な水準」となるのです。さらに他国の金利への波及効果を考慮に入れれば、円高圧力はさらに強まる可能性も指摘されています。市場では、米連邦準備理事会(FRB)が金融政策の方向転換をしたことで、「年内にも100円の大台を突破する可能性も見えてきた」という見方(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)もあり、今後の為替動向から目が離せません。

また、今回の推計では、中国の人民元についても均衡レートが算出されました。2019年1月から3月期では1ドルあたり6.74元と、実際の平均相場(6.75元)とほぼ一致していました。しかし、足元では6.88元程度と元安に推移しており、中国当局が元安を容認している姿勢も指摘されています。国際通貨基金(IMF)は、中国が2022年にも経常赤字に転じると予測していますが、もしすでに赤字であると仮定すると、均衡レートは6.8元程度になる計算です。この赤字を前提とした場合でも、足元の7元が視野に入る水準は「過小評価」されている可能性があり、今後の米中貿易協議において、為替問題が新たな対立点として浮上することも考えられるでしょう。

日本経済新聞社と日本経済研究センターが今回推計した「日経均衡為替レート」は、政府債務や対外純資産、内外金利差、交易条件、貿易財と非貿易財の価格比といった、国内外のマクロ経済指標を変数として回帰分析で算出されています。この手法は、恣意性が入り込みにくく、為替水準の割安・割高を客観的に議論するのに非常に役立つものだと、日経センターの岩田一政理事長も指摘しています。今後も定期的に公表される予定であり、為替市場を理解するための新たな「ものさし」として、その役割は増していくでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました