2019年6月28日から29日にかけて開催されるG20大阪サミットを前に、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領が日本経済新聞の単独取材に応じ、世界経済と環境問題に対する力強いメッセージを発信されました。大統領は、世界貿易に甚大な悪影響を及ぼしている米中間の貿易摩擦、いわゆる「米中貿易戦争」について、米国を念頭に「保護主義をやめるように声をあげていく」と強く批判しています。この貿易摩擦は、関税の引き上げなどにより自国の産業を守ろうとする「保護主義」的な動きが激化し、国際的な経済活動の大きな障害となっているのです。
大統領は、米中対立が世界景気の減速懸念へとつながり、インドネシア国内でも石炭やパーム油といった主要な輸出品の落ち込みとして顕在化している状況を指摘しています。実際、同年5月のインドネシアの輸出は、前年同月と比較して約1割近くも減少しており、輸出振興による経済成長を目指すジョコ政権の戦略にも大きな影響が出かねないという危機感が示されました。このような厳しい状況下においても、大統領は「この状況下でも市場開放を進める」と強調し、東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などの自由貿易協定(FTA)交渉を積極的に推進していく決意を明らかにしています。
世界共通の課題に挑む:海洋プラスチックごみとデジタル経済の未来
また、ジョコ大統領は、アジア新興国を中心に深刻な問題となっている海洋プラスチックごみ(廃プラ)についても、G20の場で問題提起を行う意向を明確に示されました。大量のプラスチックごみが海に流出し、生態系への影響や健康被害が懸念される廃プラ問題は、国境を越えた喫緊の課題です。さらに、インドネシア国内で頻発する大規模な熱帯雨林の火災による大気汚染や健康被害対策についても、過去の東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議でも取り上げたように、G20の場で議論を深めたいとの考えを示しています。
国内の主要な経済政策としては、デジタル経済の発展が掲げられ、その基盤となる次世代通信規格である「5G」の整備を推し進める方針が示されました。5Gとは、現在の4Gよりもはるかに高速・大容量で、遅延が少なく、多数の機器を同時に接続できる通信技術を指します。この5Gインフラの整備は、インドネシアのデジタル経済の成長にとって欠かせません。一方で、米国などが安全保障上の懸念から中国の通信機器大手である華為技術(ファーウェイ)の製品を排除する動きがある中、ジョコ大統領は「インドネシアは独自に判断をする」と述べ、他国の意向に左右されない自立した姿勢を示しました。
SNSの反響と編集者としての見解
この大統領の発言に対し、SNS上では「新興国のリーダーとして保護主義にNOと言うのは当然の主張だ」「海洋プラごみはアジア全体で取り組むべき問題。G20で取り上げる意義は大きい」といった共感や賛同の声が多く見受けられます。特に、米中の大国間の摩擦によって経済的影響を受ける新興国の代表として、毅然とした態度で自由貿易の推進を主張する姿勢には、多くの注目が集まっているようです。
編集者として、私はジョコ大統領の提言は非常に重要だと考えます。世界第4位の人口を擁し、東南アジアの要衝であるインドネシアが、グローバルな課題に対して積極的なリーダーシップを発揮することは、国際社会に大きな好影響をもたらすことでしょう。米中貿易摩擦という不確実性の高まりが世界経済に暗い影を落とす今こそ、保護主義を排し、国際協調に基づいた自由で開かれた市場を維持・発展させるための強い意志が求められています。また、海洋環境や大気汚染といった地球規模の課題に対する積極的なアプローチは、持続可能な未来を築くために不可欠な一歩だと言えるでしょう。
インドネシアが独自に判断するという5Gに関するスタンスは、大国の思惑に翻弄されることなく国益を追求しようとする、同国の主権国家としての自負の表れではないでしょうか。G20大阪サミットでは、ジョコ大統領のこれらの主張が、参加国間の建設的な議論を促し、より良い世界へとつながる道筋を示すことを期待したいものです。
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