2019年6月25日に開催された日産自動車の定時株主総会は、自動車業界全体が注目する異例の緊張感に包まれていました。焦点となったのは、**「指名委員会等設置会社」への移行を含む3議案です。この「指名委員会等設置会社」とは、取締役会のなかに独立性の高い社外取締役が過半数を占める「指名」「報酬」「監査」**の3つの委員会を設置し、経営の透明性を高めようという、まさにガバナンス改革の目玉となる制度のことでしょう。
一時は、筆頭株主であるルノーが一部議案への投票を棄権すると表明し、改革の行方が危ぶまれましたが、最終的には両社間の妥協が成立し、全議案が可決されました。西川広人社長は総会の冒頭で「ガバナンス再構築は喫緊の課題」と宣言したとおり、カリスマ経営者だったカルロス・ゴーン元会長に権限が集中し、不正を止められなかったという過去の反省を踏まえれば、この委員会設置会社への移行は、コーポレート・ガバナンス(企業統治)を強化するための当然の流れと言えるのではないでしょうか。
しかし、これで一件落着と見るのは早計です。ゴーン元会長が逮捕されてから半年以上が経過したにもかかわらず、日産とルノーを巡る情勢は全く落ち着いていません。むしろ、問題が解決に向かうどころか、両社の間に横たわる相互不信という、より深刻な問題が浮かび上がっているというのが実態です。
日産・ルノー相互不信の深刻化
今回の総会議案を巡るルノーの突然の投票棄権表明は、日産側にとって「大変な驚き」「誠に遺憾」という強い言葉で反論せざるを得ないほどの出来事でした。加えて、ルノーが欧米自動車大手FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)との経営統合交渉を進めていたことについても、日産は全く知らされておらず、文字通り**「寝耳に水」**の状態だったのです。**アライアンス(企業連合)**として協業する関係にあるにもかかわらず、このような重要な局面で事前に情報共有が行われないという事実は、両社の間に修復しがたいほどの深い溝ができていることを示唆しているのでしょう。
さらに、ルノーの筆頭株主であるフランス政府の行動も、国際的な企業経営の観点から見て、懸念を深める要因となっています。ルノーとFCAの統合交渉が破談となった背景には、フランス側に有利な条件を強く求めるフランス政府の介入が一因とされています。激しい国際競争が繰り広げられる自動車市場において、政府の介入によって経営判断が縛られる企業が、果たして競争力を維持できるのかという疑念は、日産をはじめとする日本側の関係者の間で、ますます強くなっていると推測されます。私の意見としても、政府の介入は、株主の利益や企業価値の最大化という観点から、長期的に見て健全な経営の妨げになる可能性が高いと考えられます。
業績低迷と西川体制の難題
もちろん、日産自身が抱える問題も少なくありません。ゴーン元会長の不正行為を見過ごしたことに対する西川社長らの経営責任を問う声は依然としてくすぶっており、総会で信任されたとはいえ、その体制への信頼は盤石とは言えない状況です。加えて、これまでのムリな拡張路線の反動で、会社の業績は低迷しています。実際、今期の配当(株主への利益還元)についても、減配の見通しが示されています。
SNS上でも、「ゴーンの件は片付いても、ルノーとの関係や業績の悪化など、日産の先行きは心配だ」「西川社長の体制で本当に難局を乗り越えられるのか」といった不安や疑問の声が多く見受けられます。こうした状況を鑑みると、この度信任を得た西川体制ですが、前途はまさに多難と言わざるを得ません。経営トップには、日産とルノーの相互不信を解消し、同時に低迷する業績を回復させるという、非常に困難な課題が課せられているのです。この難局を乗り越えるだけの卓越した経営力を発揮できるかどうか、今後も引き続き注目していく必要があるでしょう。
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