老後資金2000万円問題で現役世代が動いた! NISA・iDeCoの申し込み急増、ネット証券が牽引する「じぶん年金」づくりの最前線

2019年6月3日に公表された金融庁の報告書が、今、個人の資産形成への意識を一変させています。「老後に約2,000万円の備えが必要になる」という衝撃的な試算は、公的年金制度だけでは安心できないという現実を突きつけ、多くの現役世代を動かすきっかけとなりました。この報告書は野党からの批判を招き、麻生太郎金融担当大臣が6月11日には事実上の受け取り拒否を表明する事態となりましたが、国民の間では、公的な議論とは裏腹に、人生100年時代を見据えた「じぶん年金」づくりへの関心が爆発的に高まっています。

特に顕著な動きを見せているのが、ネット証券を利用する20代から40代の現役世代です。日本経済新聞による大手ネット証券への聞き取り調査によりますと、楽天証券では、報告書発表直後の2019年6月第3週(10日から14日)における、少額投資非課税制度、通称「NISA(ニーサ)」の契約申し込み数が、その1カ月前と比較してなんと1.7倍に急増しました。NISAとは、株式や投資信託などの金融商品から得られる運用益が非課税になる優遇制度のことです。また、個人型確定拠出年金である「iDeCo(イデコ)」についても、同時期に1.8倍の伸びを見せているとのことです。

同様に、マネックス証券でも2019年6月第3週のiDeCoの申し込みが、4月の1日平均と比べて1.7倍に増加しています。最大手のSBI証券でも、報告書が公表された6月第2週(3日から7日)に証券総合口座の申し込みが前の週に比べ15%増え、「つみたてNISA」の申し込みに至っては30%も増加しました。つみたてNISAは、投資信託を毎月積み立てることで、年間40万円までの投資に対する配当や売却益が20年間非課税になる、特に長期・積立・分散投資に適した制度です。これら大手ネット証券では、主に20代から40代を中心とした現役世代の申し込みが目立っている状況です。

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資産形成セミナーに申し込み殺到!高まる現役世代の危機意識

個人投資家の高い関心は、資産運用に関するセミナーの活況にも表れています。例えば、金融セミナーを開催するファイナンシャルアカデミー(東京・千代田)が、2019年6月17日の夜に都内で開催した、「老後に2000万円は本当に必要か緊急会議」と銘打たれたセミナーには、定員36名に対して応募が殺到しました。会場には、仕事帰りの20代から50代の会社員など、定員を大幅に上回る144名もの参加者が詰めかけたのです。また、個人の資産形成の相談に乗る専門家である**ファイナンシャルプランナー(FP)**への引き合いも増加傾向にあり、都内のFP事務所では、セミナーへの参加や資産運用の相談申し込みが通常より約4割も増加しているとのことです。

この一連の動きは、「公的年金だけでは豊かな老後を送ることが難しい」という認識が、現役世代の間に広く浸透し始めたことを示していると言えるでしょう。政府の報告書に対する批判的な論調が一部で見られたものの、個人レベルでは、人生の後半を見据えた資産形成を自ら始めるという、前向きな行動につながっているのは大変喜ばしい傾向です。私見ですが、この報告書は、国民に「自助努力」の必要性を改めて強く認識させる、ある種の警鐘としての役割を果たしたと評価できます。

ネット金融に集中する現役世代の動向と今後の課題

一方で、金融機関にとっては顧客を増やす絶好の機会であるにもかかわらず、大手証券会社や大手銀行では、窓口への来店客が大幅に増えるといった変化にはつながっていないようです。首都圏の一部の地方銀行では、4月から5月を上回るペースでつみたてNISAの受付件数を増やしている事例も見られますが、「問い合わせ自体が増えていない」とする大手地銀も少なくありません。

これは、新しく金融取引を始める現役世代の多くが、手続きが簡便なネット金融を選ぶ傾向にあるためでしょう。カブドットコム証券の斎藤正勝社長が指摘するように、「若い世代は対面よりネット口座開設に向かう」流れは、多くの店舗を持つ大手証券や銀行にとって、今後の顧客獲得における課題となりそうです。また、投資におけるリスクや手数料に関する丁寧な説明を徹底することも、金融機関に求められる重要な責務です。金融庁は、顧客の投資信託の損益状況をまとめた「共通KPI」の開示を求めていますが、2019年3月末時点で公表済みの金融機関は124社にとどまり、未開示の機関が多いことも今後の課題として残されています。

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