2019年6月24日に開催された野村ホールディングス(HD)の株主総会で、古賀信行会長と永井浩二グループ最高経営責任者(CEO)の再任に対する株主の賛成比率が、いずれも6割強という異例の低さにとどまったことが、25日に判明しました。この結果は、市場の信認が大きく低下している現実を突きつけるものと言えるでしょう。
野村HDが開示した臨時報告書によると、古賀会長への賛成比率は62.3%であり、永井グループCEOに至っては61.7%でした。この数字を、前年2018年の株主総会と比較してみると、その落差は歴然としています。昨年の古賀氏の賛成比率は86.5%、永井氏にいたっては96.0%で、まさに市場からの「支持率」が急落した格好となりました。この事態は、金融業界のリーディングカンパニーである野村HDの経営陣に対する、株主の厳しい視線を明確に示しています。
株主の信認低下の背景には、複数の深刻な問題が横たわっています。まず、2019年3月期には1,000億円を超える最終赤字(会社が事業活動で最終的に計上した損失額のこと)を計上するという、極めて厳しい業績低迷があります。これに加えて、2019年5月には、東京証券取引所の市場区分再編に関する情報漏洩問題で、金融庁から業務改善命令を受けるという事態が発生しました。これらの複合的な要因が重なり、「業績不振も踏まえ、8年目に突入している経営体制に賛成しにくい」という国内機関投資家からの厳しい声も出ていたのです。
実際、株主総会の前には、米国の有力な議決権行使助言会社(機関投資家などの代わりに、株主総会での議案に対する賛否を推奨する会社)であるインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が、古賀氏と永井氏ら3人の再任に反対を推奨していました。また、別の助言会社であるグラスルイスも、一時古賀氏を含む取締役の再任案に反対を表明していたのです。
このような状況を受けて、野村HDは株主総会の直前に、ガバナンスと株主還元を強化することで理解を求めようと、異例の対応を取りました。具体的には、古賀氏を指名委員会と報酬委員会の委員長に就けるという当初案を修正し、関連会社の野村総合研究所の株式の一部売却による最大1,500億円の自社株買い(企業が自社の株式を市場から買い戻すことで、株価の上昇や株主還元につながる行為)を決定しました。グラスルイスはこの対応を受け反対意見を取り下げましたが、ISSの反対推奨は依然として残っていたのです。
株主総会での会社提案に対する賛成比率が低い場合、その原因を分析し、株主との対話を検討することが、東京証券取引所が上場企業に適用する**企業統治指針(コーポレートガバナンス・コード)**によって求められています。これは、企業が株主の利益を重視し、透明性の高い経営を行うための国際的な規範です。今回の野村HDのケースは、まさにこの指針が求める対応が必要とされる状況であり、同社には今後の追加説明や対話などの対応が強く求められることになるでしょう。
株主の「NO」は経営陣への厳しい警鐘です
今回の株主総会で示された賛成比率の低下は、単なる数字以上の重みを持っています。SNSなどでも、「金融庁の命令が出るような会社で、なぜ引き続き経営責任を問わないのか」といった厳しい意見や、「株価が低迷しているのに経営陣が居座るのは納得がいかない」という、個人投資家からの怒りの声が散見されました。株主は、投資を通じて企業の成長を支えるパートナーですが、そのパートナーからの「NO」は、現在の経営体制に対する強い不満と、透明性や責任ある行動への切望を意味していると考えられます。
私自身の意見としては、野村HDのような日本の金融資本市場を牽引する大企業が、相次ぐ不祥事と業績不振によって株主の信頼を失っている状況は、極めて憂慮すべき事態です。特に、情報漏洩という、証券会社の根幹を揺るがす問題で行政処分を受けたことは、経営陣のコンプライアンス(法令遵守)意識が欠如しているのではないかという疑念を生じさせてしまいます。株主総会直前の自社株買いなどの「つじつま合わせ」のような対応ではなく、抜本的な企業文化の刷新と、経営責任の明確化を通じて、失われた信認を取り戻すべきでしょう。
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