日本の海運業界に激震が走ったコンテナ船事業の統合から時が経ち、いよいよその真価が発揮されつつあります。川崎汽船の明珍幸一社長はインタビューに対し、日本郵船や商船三井と共同で立ち上げたコンテナ船子会社「オーシャン・ネットワーク・エクスプレス(ONE)」について、統合の効果が着実に現れていると力強い手応えを示しました。初年度の混乱を乗り越えた今、世界を舞台にした新しい日本の海運の形が証明されようとしています。
このONEの復活劇に対してSNS上では、日本の海運大手が手を取り合った大プロジェクトだけに、一時は心配する声も上がっていたけれど軌道に乗って本当に良かったという安堵の声が広がっています。さらに、世界的なメガキャリアと対等に渡り合うための英断を支持するコメントも目立ち、多くのビジネスパーソンがこの海運維新の行方に熱い視線を注いでいることが窺えるでしょう。個々の力を結集させたシナジーが、今まさに数字となって表れています。
コンテナ船業界は近年、1隻あたり100億から150億円とも言われる超大型船を数十隻規模で揃えなければ生き残れないほど、巨額の投資が必要な時代へ突入いたしました。明珍社長は、業界の集約が進んだことで、これからは貨物の需給バランスがダイレクトに運賃を乱高下させるリスクが減ると分析しています。市場の安定化が進めば、海運各社は過酷な価格競争から脱却し、適正な利益を安定して確保できるようになるに違いありません。
激化する米中摩擦の影響により、コンテナ貨物の積み地が中国から東南アジアへシフトしている現状についても、明珍社長は冷静なプロの視点を見せてくれました。ベトナムなどの伸びが顕著であるものの、こうした生産拠点の移動はいずれ落ち着くと分析されています。なぜなら、米国が警戒する対象の地域が変わるだけであり、アジア全体で見ればバングラデシュなどへ緩やかに分散していくプロセスに過ぎないからと言えます。
生産拠点の東南アジアシフトを受け、川崎汽船では荷主からの情報収集を急ピッチで進めている模様です。集まった最新のデータをもとに、2020年春に予定されている航路見直しのタイミングで、柔軟なネットワークの再構築が反映される可能性を示唆しました。世界情勢の荒波を敏感に察知し、先手を打って航路を最適化していくスピード感こそが、これからのグローバル競争を勝ち抜くための最大の武器になるでしょう。
さらに気になるのが、2020年3月期末以降に控える次期中期経営計画の動向です。同社は構造改革の一環として石油製品船を手放すなど、痛みを伴う不採算部門の整理をすでに高いレベルで完了させています。明珍社長は、これ以上の大規模なリストラは必要ないとの認識を示しており、今後は自社の強みをさらに尖らせる攻めのフェーズへと舵を切る方針であるため、ファンや投資家からの期待も一層高まっています。
川崎汽船が誇る強みの筆頭が、鉄鉱石や石炭などを大量に運ぶ「ばら積み船」と呼ばれる、梱包されていない貨物をそのまま船倉に入れて運ぶ専用の輸送船事業です。大型のばら積み船において同社は世界シェアの約6%を握っており、中国やインドといった成長著しい国々との間で中長期の安定した契約を複数結んでいます。この確固たる基盤があるからこそ、世界的な競争のなかでも十分に勝ち残っていける自信が漲っているのでしょう。
財務体質の健全化に向けては、現在13%程度に留まっている自己資本比率を、業界の標準的な目安とされる20%台へ早期に引き戻すという目標を掲げています。2020年3月期末の時点では現行の水準を維持する見通しですが、今後3〜5年をかけて着実に財務基盤を強化していく構えです。同時に、株主への利益還元である復配についても真剣に検討する意向を示しており、企業の社会的責任を果たそうとする誠実な姿勢が伝わります。
世界中で地球温暖化対策が急務となるなか、海運業界でも二酸化炭素の排出規制が急速に強化されています。この環境の荒波に対して、同社は最先端のグリーンテクノロジーで挑む決意を固めました。航空機大手エアバスの子会社と2年前から共同開発を進めてきた、自然の風をクリーンな推進力に変えて船を動かす革新的な装置がついに完成を迎え、2021年初頭には本物の大型船に搭載される計画が進んでいます。
風力という原点にして究極のクリーンエネルギーを活用することで、国際目標である燃費の4割改善をクリアした次世代のエコシップが誕生する予定です。明珍社長が語る「日本の高い環境技術を世界に見せつけたい」という熱い言葉には、編集部としても日本のものづくりの意地と誇りを感じずにはいられません。環境規制を単なるピンチではなく、次世代の覇権を握るチャンスへと変える川崎汽船の航路には、輝かしい希望が満ちています。
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