2019年6月、金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループが公表した報告書が、日本社会に大きな波紋を広げました。いわゆる「老後2000万円問題」です。この報告書は、年金以外に約2000万円の金融資産を確保しないと、老後の生活が立ち行かなくなる可能性があるという試算を示したもので、多くの国民に衝撃を与えたと言えるでしょう。この事態を受け、オンライン証券大手のマネックス証券では、顧客を対象とした緊急の意識調査を2019年6月21日から24日にかけてインターネット上で実施しました。
この調査では、主に20代から50代の約9,600人もの投資経験者が回答し、非常にリアルな危機意識が浮き彫りになりました。驚くべきことに、回答者の実に86パーセントが、「老後2000万円では生活資金として不十分だ」と考えていることが判明したのです。この数字は、資産形成への意識が高い層の間でさえ、公的な試算に対する強い懸念が広がっていることを示唆しているのではないでしょうか。さらに、全体の41パーセントは、「老後に必要な金額は5000万円以上」と回答しており、必要資金に対する認識が一般的に高いことが見て取れます。
今回の金融庁の報告書は、公的年金制度を補完するためには、自助努力による資産形成、つまり**「積立投資(つみたてとうし)」などの私的な備えが不可欠であることを再認識させるきっかけとなりました。積立投資とは、毎月決まった金額を自動的に投資信託や株式などの金融商品に積み立てていく手法のことで、少額から始められ、リスクを分散しやすいというメリットがあります。すでに積立投資を実践している5,198人の回答者に着目すると、最も多かったのは月々1万円から4万9,999円を積み立てている層でした。この結果から、多くの個人が無理のない範囲で、着実に未来に向けた資産形成を始めている様子がうかがえます。
今回の「老後2000万円問題」は、SNSでも瞬く間に拡散され、大きな反響を呼びました。「年金だけでは不安すぎる」「自助努力に頼る時代なのか」といった不安の声や、「これを機に資産運用を勉強し始めた」といった前向きな意見まで、さまざまな見解が飛び交いました。調査結果にもある通り、金融資産を保有している比較的裕福な層においても、「老後の生活への不安が増した」と感じている人が21パーセントに上っており、この問題は決して他人事ではないという認識が広まっている証拠ではないでしょうか。
編集者としての私見ですが、今回の報告書は、私たち一人ひとりが将来のお金のことを真剣に考え、行動を起こすための重要な警鐘になったと感じています。老後の生活設計は、個人のライフスタイルや健康状態によって必要な金額が大きく変わります。公的な年金制度が土台となることは変わらないものの、それに加えて、インフレ対策としても有効な資産運用、特に長期・分散・積立を基本とする「NISA(ニーサ)制度」**などの税制優遇制度を積極的に活用することが、豊かな老後を迎えるための鍵になるでしょう。NISA制度とは、少額投資非課税制度のことで、投資で得た利益(運用益)が非課税になる優遇制度のことです。この記事をきっかけに、ぜひご自身のマネープランを見直してみてはいかがでしょうか。