インドネシア共和国のジョコ・ウィドド大統領は、2019年6月25日の日本経済新聞との会見において、同年10月から始まる2期目(任期5年)の国家課題として、「構造改革」を推進し、1期目を超える高い経済成長を実現するとの強い決意を表明されました。この成長戦略の具体的な柱として、法人税の大胆な引き下げと、首都機能の一部移転という、きわめて野心的な構想を打ち出されています。大統領は、これらの施策を通じて、2045年までにインドネシアを経済規模で世界第4位の経済大国に押し上げるという壮大な目標を掲げていらっしゃるのです。
経済成長を加速させるための最大の目玉の一つが、外国企業からの直接投資の呼び込みです。大統領は、規制緩和を推進する姿勢を明確に示され、その具体的な措置として、現在の25%である法人税率を20%に引き下げる方針を明らかにしました。実施時期については「2020年か、遅くとも2021年には実施する」と明言されており、企業の皆様にとって大きな期待材料となるでしょう。なお、財源についての言及は会見では控えられています。
さらに、税制面での優遇策として、主にデジタル分野の研究開発や人材育成に企業が投資した金額について、その最大2倍を法人税から控除できる制度を「7月には始める」とも述べられました。これは、イノベーションと人材育成への投資を国として積極的に支援する姿勢の表れと言えます。また、日本企業をはじめとする外国企業から指摘されていた、税金の還付が滞るなどの税制運用の不透明さについても、大統領は問題の報告を受けていることを認め、「改善する」と約束されており、投資環境の整備に真摯に取り組む姿勢が伺えるでしょう。
投資促進策としては、複雑な許認可手続きを簡素化するため、「投資窓口の一本化」を一段と進める方針も示されました。こうしたビジネス環境の改善と優遇税制によって、電気自動車(EV)などの次世代製造業を積極的に誘致し、新たな成長エンジンとする狙いがあります。これらの新しい分野の輸出振興を牽引役に、2045年には日本などを上回る世界第4位の経済大国を目指すという、大変明確な国家戦略が描かれているのです。私自身の意見としましては、この大胆な法人減税と税制優遇は、海外からの投資を強力に引きつけ、インドネシアの潜在的な経済力を一気に開花させる起爆剤となり得ると期待しています。
国家の均衡発展を促す「首都機能の一部移転」構想
ジョコ大統領が描くもう一つの重要な構造改革は、「首都機能の一部移転」です。東西5,000キロメートルにわたる広大な国土の均衡ある開発を促すため、現在は人口の半分以上が集中するジャワ島のジャカルタから、首都機能の一部を移転させる考えを示されました。具体的には、マレーシアと国境を接するボルネオ島(カリマンタン島)に行政首都を新設する計画です。
この行政首都には、官庁などの行政機能が移転する想定ですが、中央銀行や証券取引所といった経済機能は、引き続きジャカルタにとどめる方針です。移転時期については「8月にも報告を受け最終決定する」と述べるにとどまっていますが、政府内部では5年後を目途に、3兆円規模の事業費を見込む計画が検討されている模様です。この首都機能の一部移転の最大の目的は、ジャワ島以外の「外島」と呼ばれる地域への企業誘致を促し、地域間の経済格差を縮小することにあります。
インドネシアは、約2億7,000万人という巨大な人口を擁する地域大国であり、巨大市場としての潜在力は計り知れません。しかし、1万以上の島々で構成される国土の開発は、ジャワ島とそれ以外の地域との間で大きなばらつきが生じています。この格差是正は、持続的な経済成長を実現する上で避けて通れない課題でしょう。大統領のこの構想は、単なる行政上の措置ではなく、国家の未来を見据えた国土の再均衡戦略であると評価できます。
また、2期目もインフラ開発は引き続き重要な課題であり、ジョコ大統領は「日本との協力は重要だ」と強調されました。2019年3月にジャカルタで開業した同国初の地下鉄部分を含むMRT(大量高速輸送システム)の延伸や、新たな路線の建設も「日本と進める」と語っておられます。さらに、ジャワ島西部のジャカルタと東部の第二の都市スラバヤを結ぶ新たな鉄道路線についても、日本との連携を前提とした事業化調査が進行中であることを明らかにされました。
ジョコ政権は、2014年10月の発足以降、年率5%前後の安定成長を続けており、これは世界的に見ても素晴らしい実績です。しかし、5.5%から6.5%とされる潜在成長率にはまだ届いていません。1期目には総額50兆円規模のインフラ開発計画を打ち出し、大型港湾や発電所などの建設を強力に推進してきました。2期目の課題は、このインフラを最大限に活用し、大胆な構造改革と規制緩和によって、潜在成長力を引き出し、掲げた「世界第4位」という壮大な目標へ向かって邁進することにあると言えるでしょう。
このジョコ大統領の発表に対して、SNS上では「法人減税は英断だ。これで海外企業が一気にインドネシアに流れ込むだろう」「税制運用の不透明さの改善も約束されたのは大きい」「首都機能の移転は大きな決断だが、外島発展のためには必要な一手だ」といった期待と賛同の声が多く見受けられます。一方で、「3兆円規模の首都移転事業は本当に必要か?」「ジャカルタの経済機能維持と行政機能移転のバランスが鍵だ」といった懸念の声や、今後の政策の具体化と実行力を見守る冷静な意見も寄せられています。
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