東北電力の女川原子力発電所2号機を巡り、2020年は再稼働に向けた動きが大きな節目を迎える見込みです。原子力規制委員会が事実上の合格証にあたる「審査書案」をまとめたことで、地元での議論が本格化しつつあります。しかし、その足並みは決して揃っているわけではありません。SNS上でも「福島の教訓を忘れてはならない」「現実的な電力供給を考えると複雑」といった、多様な意見が飛び交い大きな関心を集めています。
特に注目すべきは、原発から30キロメートル圏内に位置する「緊急防護措置区域(UPZ)」の動向でしょう。UPZとは、万が一の原子力災害時に迅速な対応が求められるため、事前に避難計画を策定することが義務付けられた極めて重要なエリアを指します。女川原発の周辺では、立地する石巻市と女川町に加え、登米市、東松島市、南三陸町、涌谷町、美里町の計7市町がこの区域に該当し、それぞれが切実な課題を突きつけられている状況です。
交錯する思惑!安全協定と事前了解権を巡る火種
立地自治体以外の周辺5市町は首長懇談会を重ねていますが、再稼働へのスタンスは一様ではありません。宮城県や立地自治体は、東北電力との間で再稼働の可否を判断する「事前了解」を含む安全協定を結びます。しかし、周辺5市町にはこの事前了解の権利が与えられておらず、これが議論を複雑にしています。ネット上では「周辺住民の安全も同じなのに、なぜ権利に差があるのか」と疑問を呈する声が上がっているのも事実です。
こうした中、独自の動きを見せるのが美里町です。同町は2012年にいち早く「脱原発」を宣言しており、現在の相沢清一町長も再稼働に対して明確に反対の意思を示しています。次の懇談会では、事前了解権を周辺自治体にも拡大するよう提案する方針を固めました。一方で、他の4市町は依然として県や立地自治体の様子をうかがう姿勢を崩しておらず、足並みの乱れは隠しきれないのが現状と言えます。
形骸化する避難計画?今すぐ見直しが必要な実効性の壁
さらに深刻なのは、災害時の避難計画が内包する実効性の課題でしょう。例えば南三陸町では、避難時の集合場所を震災後の仮設住宅の駐車場に設定していました。しかし、高台移転が進んで仮設住宅の利用者が減った現在でも計画が更新されておらず、現状に即した見直しはこれからの課題となっています。また、要介護者などの移動手段の確保といった、災害弱者への対応についても具体的な解決策は見出せていません。
こうした実効性の低さに危機感を募らせた石巻市の住民団体は、自治体に対して再稼働に同意しないよう求める仮処分を申し立てる事態に発展しました。私は、この住民の行動こそが地域社会のリアルな不安を体現していると考えます。行政が机上の空論ではない、命を守るための「生きた避難計画」を提示できない限り、住民の深い不信感を拭い去ることは到底できないでしょう。安全の担保がないままの議論は、避けるべきです。
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