アップル本社が認めた究極の「普通」とは?プロダクトデザイナー深澤直人氏が挑む、人を幸せにするデザインの神髄

米シリコンバレーにあるアップル本社には、日本の職人技が息づく美しい木製の椅子が数千脚も並んでいます。この椅子を手掛けたのが、日本を代表するプロダクトデザイナーの深澤直人氏です。プロダクトデザイナーとは、家電や家具など日常の生活で使う製品の見た目や使い勝手を設計する専門職のことですが、彼の生み出す作品はどれも驚くほどシンプルで、私たちの暮らしに自然と溶け込みます。ネット上でも「深澤さんのデザインは体の一部になったような安心感がある」と、その心地よさに魅了される声が絶えません。

2020年01月19日現在、深澤氏は無印良品のアドバイザーや携帯電話「インフォバー」の設計など、日本のデザイン史を彩る名作を次々と世に送り出しています。彼の信念は「人間を幸せにするデザイン」を生み出すことであり、驚くことに自分を表現したいという欲求はほとんどないそうです。幼少期から直感に正直だった彼は、周囲の意見に流されることなく、独自の視点で物事の本質を見つめ続けてきました。工業高校の3年生の時に、製品を通じて人を幸せにするこの職業を知り、直感に従ってデザインの道を志したのです。

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世界の「ディテールキング」が突き当たった壁と、俳句がもたらした転換点

若き日の深澤氏は、時計メーカーの諏訪精工舎でキャリアをスタートさせました。当時から「一番普通の製品を作ればいい」と主張していたものの、さらなる飛躍を求めて1980年代にアメリカのシリコンバレーへと渡ります。最先端のIT企業が集まるその地で、彼は数々のコンピューターの設計を手掛け、細部まで完璧に作り込まれた美しい箱を生み出す「ディテールキング」として名を馳せました。しかし、目まぐるしく変わる流行の波の中で、自己表現を求められるアメリカのスタイルに次第に疑問を抱き始めます。

その後、よりデザイナーの地位が高いヨーロッパへの進出を試みるものの、自分自身の作家性をどう打ち出すべきかという深い苦悩に直面することになりました。そんな悶々とした日々の中で出会ったのが、俳句の巨匠である高浜虚子の言葉「客観写生」です。客観写生とは、作者の主観や感情をあえて前面に出さず、ありのままの事実を平易に描写することで、かえって深い情景や感動を伝えるという表現技法を指します。この言葉に衝撃を受けた深澤氏は、これまでの「個性を表現しようとするデザイン」を潔く手放す決意を固めたのです。

世界が共感する「超普通」の美学、換気扇のようなCDプレーヤー

自己表現へのこだわりを捨て去った彼が辿り着いたのは、「スーパーノーマル(超普通)」という全く新しい境地でした。一見するとどこにでもあるような牛乳瓶や買い物かごの中にこそ、長年愛されてきた使いやすさと普遍的な美しさが隠されています。SNSでも「普通を極めることが、これほど斬新だとは思わなかった」と、多くの人が彼の哲学に驚きと共感を寄せています。若い頃に漠然と信じていた「普通」の意味が、世界を巡る長い回り道の果てに、より深い確信へと変わった瞬間でした。

その象徴とも言える名作が、ニューヨーク近代美術館に永久収蔵されている無印良品の「壁掛式CDプレーヤー」です。換気扇のような形をしており、紐を引くと中のCDがファンのように回転して音楽が流れ出すこの製品は、発売から20年が経過した今も世界中で愛されています。誰もが心の中で無意識に求めている「心地よい生活の風景」を形にする深澤氏の挑戦は、これからも続きます。私たちは彼の作品を通して、日常に隠された本当の豊かさに、何度も気付かされることになるでしょう。

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