医療の未来を大きく変える可能性を秘めたiPS細胞ですが、実用化への道のりには常に「がん化」という大きな壁が立ちはだかっていました。iPS細胞(人工多能性幹細胞)とは、人間の皮膚などの細胞から作られ、体のあらゆる組織に変化できる万能な細胞のことです。しかし、目的の組織に成長しきれなかった未熟な細胞が混ざっていると、移植した後に異常に増殖して腫瘍になってしまうリスクがありました。
そんな再生医療の安全性を劇的に高める革新的な手法を、慶応義塾大学の岡野栄之教授らと量子科学技術研究開発機構の共同研究チームが開発し、2020年01月20日に発表しました。研究チームが目をつけたのは、陽電子放射断層撮影装置、通称「PET(ペット)検査」と呼ばれるお馴染みの画像診断技術です。このお馴染みの技術を応用して、体内に移植した細胞の様子を外側から安全に見守る仕組みを作り上げました。
ネット上でもこのニュースは大きな話題を呼んでおり、SNSでは「iPS細胞の最大の弱点が克服されるかもしれない」「これで再生医療が一気に身近になりそう」といった期待の声が続々と寄せられています。これまで不安視されていた安全性の問題に対して、具体的な解決策が提示されたことへの安心感が広がっているようです。一歩ずつ、しかし確実に未来の医療が近づいている実感が湧いてきます。
今回の画期的なアプローチの鍵を握るのは、細胞内の膜に存在する特定の「たんぱく質」です。研究チームは、神経細胞に成長しきっていない未熟な細胞において、このたんぱく質が急激に増加するという性質を発見しました。この特性を利用すれば、危険な未熟細胞だけをピンポイントで見つけ出すことができると考えたのです。発想の転換が素晴らしい成果を生んだ好例と言えるでしょう。
実験では、このたんぱく質にピタッとくっつく特殊な「目印の分子」をマウスの体内に投与し、PET装置で撮影を行いました。すると、未熟な細胞が異常に増殖している場所に目印の分子が集まり、まるで見える化されたかのように鮮明に確認できたのです。これまで盲点だった移植後の細胞の挙動を、リアルタイムで監視できる道が切り開かれました。
脊髄損傷治療の臨床研究へもたらす絶大な安心感
現在、慶応義塾大学ではiPS細胞を用いた脊髄損傷の治療を目指す、先進的な臨床研究を進めています。臨床研究とは、新しい治療法を実際の患者に試して安全性や効果を確かめる最終段階のステップのことです。脊髄を損傷して体を動かせなくなった患者にとって、この治療はまさに希望の光ですが、実用化には安全性の担保が何よりも最優先されます。
今回の監視手法が確立されれば、移植後の経過観察がこれまで以上にスムーズかつ確実に行えるようになるでしょう。私個人としても、この技術は再生医療全体の信頼性を底上げする極めて重要なピースになると確信しています。万が一のリスクを事前に察知できるシステムがあるからこそ、医師も患者も安心して最先端の治療に挑めるはずです。
研究チームは今後、さらなる安全性の検証を重ねるとともに、人間への応用を見据えた最適な投与方法の検討を本格化させる方針を掲げています。iPS細胞が夢の技術から、誰もが受けられる当たり前の治療へと変わる日はそう遠くないかもしれません。日本の科学技術が世界の医療をリードしていく姿を、これからも応援しながら見守りたいものです。
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