おしゃれを楽しみたい冬の季節ですが、洋服や靴を扱う専門店にとっては非常に厳しい年末となってしまいました。日経MJの調査によると、2019年12月における主要なアパレル・靴専門店13社のうち、なんと12社で既存店売上高が前年の実績を下回る結果を記録したのです。インターネット上のSNSでも「今年は全然寒くなくてダウンジャケットの出番がない」「冬服を買いにいく気分になれない」といった声が相次いでおり、消費者の購買意欲が冷え込んでいた様子がうかがえます。
今回の苦戦をもたらした最大の原因は、記録的な暖冬による防寒着の販売不振です。特に冬のアパレル市場を牽引するユニクロでは売上高が5.3%減少し、4カ月連続のマイナスから抜け出せませんでした。さらにライトオンでは前年同月比20.1%減という大幅な落ち込みをみせています。単価が高く利益を出しやすいダウンジャケットなどの防寒衣料が店頭で足踏みしてしまい、代わりに春先まで着られる比較的安価なスエットや、糸を編み込まずに布地を切り裂いて作る「カットソー」と呼ばれる薄手のカジュアル服に人気が集中したことが響きました。
さらに追い打ちをかけたのが、カレンダーの巡り合わせによる年末商戦の盛り上がり欠如です。2019年は改元の影響により、それまで祝日だった12月23日が平日へと変わりました。加えて24日のクリスマスイブも4年ぶりの平日となり、前年に比べてお買い物を楽しめる休日が2日も減少したのです。これにより、クリスマスや年末に向けたお買い物ムードが大きく削がれてしまいました。平日の忙しさに追われ、プレゼントや自分へのご褒美をじっくり選ぶ時間を確保できなかった生活者も多かったのではないでしょうか。
個別の企業に目を向けると、独自のイベントが裏目に出たケースも見られます。マックハウスでは売上高が11.6%減少しましたが、これは11月にアメリカ発祥の11月第4金曜日を中心とした大規模セールである「日本版ブラックフライデー」を開催したことが影響しています。この時期に魅力的な安売りをおこなったため、年末にまとめ買いをするはずだった顧客の需要を11月の段階で「先食い」してしまったといえるでしょう。早くからお得に買い物を済ませた消費者が多かった反面、12月の店舗は寂しい結果となりました。
好調を維持していた女性向けブランドのアダストリアやハニーズも、それぞれ4%から5%ほどの減収を余儀なくされています。値引きを抑えて定価で販売することで顧客1人あたりの購入額を示す「客単価」を上昇させる戦略に挑んでいましたが、お出かけ時の寒さ対策が不要な気候の前には、その効果も十分に発揮できませんでした。また靴専門店のABCマートやチヨダも例外ではなく、記録的な少雪によって冬の定番である防水ブーツや長靴の需要が激減し、冬ならではの機能性商品の強みを活かせないまま年を越すこととなりました。
ビジネスウェアの分野でも冬風は吹き荒れています。紳士服大手の青山商事やAOKIホールディングスはともに1割を超えるマイナスを計上しました。こちらは2019年9月の消費税増税前に発生した駆け込み需要の反動から客足の戻りが鈍く、さらに仕事着としてコートを着ないカジュアルな装いが浸透したことも痛手となっています。私は、アパレル各社が天候のせいに留まらず、フリマアプリなどの個人間取引の普及といった消費行動の根本的な変化に素早く適応していくことこそが、今後の生き残りの鍵を握ると確信しています。
激動の2019年を乗り越えた各社ですが、ただ手をこまねいているわけではありません。足元では最新のスキャン技術を活用し、スマートフォンなどで手軽に自分好みのサイズやデザインを指定できる「オーダーメードサービス」を導入する先進的な動きも始まっています。私はこうした取り組みこそが、お天気や流行の波に振り回されない強固な事業基盤を作るための希望の光になると考えています。新しい時代のニーズを捉えた魅力的な服作りの挑戦に、これからも大いに注目していきたいところです。
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