世界を揺るがす壮大な地政学のトレンドに、今まさに多くの人々が目を見張っています。拓殖大学学事顧問の渡辺利夫氏も絶賛する一冊が、米国の高名な研究者であるケント・E・カルダー氏の著書『SUPER CONTINENT』です。本書は、これまでの国際情勢の常識を覆すほどの圧倒的な説得力に満ちあふれています。ネット上でも「今後の国際情勢を見通すバイブル」「点と点がつながる快感がある」と、知的好奇心を刺激された読者からの熱い声が続々と寄せられている最中なのです。
現在、膨大な人口を抱える中国とインドが驚異的な経済成長を続けています。これに伴い、両国が必要とするエネルギーの量は天文学的な規模に達しつつある状況です。幸いなことに、この莫大な需要を満たす天然資源は、ロシアや中央アジアといったユーラシア大陸の内部に豊富に存在しています。そして今、これらの需要と供給を結びつけるインフラの建設が、これまでにない異次元のスピードで大陸全体を一つに連結し始めているのです。
ここで注目すべきは、単に物流網がつながるだけではないという点でしょう。輸送技術の大幅な刷新や、資金調達を円滑にする金融イノベーションが加わることで、この連結は爆発的な相乗効果を生み出します。著者は、この結びつきがユーラシア各国の力を単純に足し合わせたものを遥かに凌駕する、巨大なエネルギーになると予測しています。陸続きである欧州もこの地政学、すなわち地理的な位置関係が政治や国際関係に与える影響の力学と無縁ではいられません。
現に、ヨーロッパと中国の距離は急速に縮まっています。かつて20世紀の初頭から顕在化していた戦争や革命、激しい民族主義による摩擦を乗り越え、なぜ今この大陸は急速に融和へと向かっているのでしょうか。その背景には、中国が進める「一帯一路構想」という巨大経済圏構想や、ウクライナ危機による米国の影響力の低下、さらには米国自身が自国の利益を最優先する一国主義へと傾いている現状が、複雑に絡み合っていると考えられます。
このようにして、ユーラシア大陸はアメリカ大陸に代わる「スーパー大陸」として、まもなくその圧倒的な姿を現すことになるに違いありません。しかし、ここで一つの疑問が浮かび上がります。親日家として知られる著者でありながら、この世紀の大転換期において、日本がどのように立ち回るべきかという具体的な言及がほとんど見当たらないのです。日本は大陸の東端にありながら、太平洋を挟んだ米国と同盟を結ぶ特殊な立場にあります。
世界第3位の経済力を誇る日本は、この地殻変動をただ見つめているだけで良いのでしょうか。著者はあえて語らないことで、「海洋国家」や「大陸国家」という従来の古い枠組みに囚われること自体の危うさを、私たちに警告しているのかもしれません。一国主義の台頭によって国際秩序が混迷を極める今だからこそ、地球規模のダイナミズムを捉えた本書の視点は、私たちが進むべき未来の航路を照らす重要な道標になるはずです。
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