日本ワインの未来を占う!長野県ワイナリーが生き残るための「多様化」と「価格戦略」とは?

日本ワインへの注目がにわかに高まる中、長野県を中心にワイナリーの数が急増しています。2020年01月11日、信州大学の特任教授であり「日本ワインブドウ栽培協会」の代表理事を務める鹿取みゆき氏が、今後の市場を生き抜くための戦略を語りました。

現在、世界のワイン界では大きな変化が起きています。これまでは見向きもされなかったマイナーな品種や、特定の地域だけで採れる固有種、さらには新たに開発された品種へと注目が集まっているのです。多様な個性を楽しむ時代が到来していると言えるでしょう。

また、地球温暖化をはじめとする気候変動への危機感も世界中で募っています。気温が上昇するとブドウの糖度が上がり、結果としてワインのアルコール度数が高くなりすぎてしまうのです。健康志向が強い富裕層を中心に、高アルコールのワインを敬遠する動きが出ています。

こうした背景から、フランスなどでは環境に配慮した「有機畑」が増加しています。化学農薬や化学肥料に頼らず、自然の力を引き出す有機栽培(オーガニック)への転換は、現代のワイン造りにおいて無視できない世界的な一大トレンドになっていると言えます。

SNS上でも「これからは銘柄や知名度だけでなく、造り手の環境への姿勢でワインを選ぶ時代になりそう」といった、サステナブルな取り組みに共感するワインファンの声が数多く見られます。環境への配慮は、今後のブランド価値を大きく左右するはずです。

日本や長野県のワイン事情に目を向けると、メルローやシャルドネといった王道の国際品種ばかりに注力する現状には危機感があります。世界的なトレンドに遅れないためには、日本も栽培するブドウの品種をさらに増やし、多様化を進める必要があるでしょう。

特に小規模なワイナリーにおいては、明確なフィロソフィー(独自の醸造哲学やコンセプト)を持たなければ生き残れない厳しい時代です。単に美味しいという理由だけではなく、「なぜこのワインを造るのか」というストーリーが消費者を惹きつける鍵になります。

長野県は雨が少なくて日照時間が長いため、ワイン用のブドウ栽培にとって非常に有利な条件が揃っている地域です。さらに、標高差のある盆地にブドウ園が点在しているため、一つのエリアであっても多様なバリエーションの品種を育てられる強みがあります。

専門家の間では、長野県で古くから栽培されている日本固有のブドウ品種「善光寺(竜眼)」のポテンシャルを高く評価する声も上がっています。海外産のワインにはない、日本独自のアイデンティティを表現できる品種として、今後の活躍が期待されています。

一方で、長野県のワイナリー数はここ数年で倍増しており、ブランド間の競争は激化の一途を辿っています。2010年ごろまでは、自社畑のブドウでワインを造ること自体が珍しく、それだけで十分に強力なセールストークとして成立していました。

しかし、現在では自社畑での栽培は当たり前の光景となり、それだけで差別化を図ることは困難です。ネット上でも「最近は新しいワイナリーが増えすぎて、どれを選べばいいか迷ってしまう」という、贅沢ながらもリアルな消費者の本音が囁かれています。

もう一つの課題が「価格」です。日本の小規模ワイナリーが造るワインは、1本3500円を超える高価格帯のものが目立ちます。海外から安くて高品質なワインが次々と流入する中で、この価格設定だけで勝負を続けることには限界があるのではないでしょうか。

私は、プレミアムな高級ワインだけでなく、日常的に楽しめる低価格で安定したラインナップを揃えることこそが重要だと考えます。病気に強くて収穫量がしっかりと確保できる品種を賢く導入し、ワイナリーとしての収益基盤を固めるべきです。

これからのワイン界を占うキーワードとして、鹿取氏は容器の変革を挙げています。それが、キーケグと呼ばれる特殊なプラスチック製の樽型容器を使用した「タル生」ワインです。瓶代や輸送コストを大幅に削減できるため、安価での提供が可能になります。

本格的にグラスを傾けるだけでなく、飲食店などで「ちょっと喉を潤したい」というカジュアルな需要に、このタル生ワインが応え始めています。ワインの敷居を下げ、より多くの人に日常的に親しんでもらうための強力なツールになることは間違いありません。

さらに、注目すべきトレンドが「フィールドブレンド(混植混醸)」という手法です。これは一つの畑に異なる複数のブドウ品種を植え、収穫後にそれらを一緒に発酵させる伝統的な造り方です。品種ごとの出来不出来を相殺し、年ごとの品質の差を減らせます。

このフィールドブレンドは世界的に急増しており、日本国内でも北海道などで取り入れるワイナリーが大幅に増えています。自然の気候に左右されやすいワイン造りにおいて、リスクを分散しながら土地の個性を表現する、合理的かつ魅力的な手法と言えるでしょう。

長野県のワインが次のステージへ進むためには、従来の固定観念にとらわれない柔軟な挑戦が不可欠です。多様な品種の栽培、日常に寄り添う価格帯の実現、そして新たな醸造手法への挑戦が、日本ワインの未来をより豊かで輝かしいものにするでしょう。

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