くじ引きで政治を決める!?フランスの挑戦から考える「民主主義3.0」と日本の未来

もしあなたが明日、突然国のリーダーになったら、消費税やエネルギー問題にどう決断を下すでしょうか。そんな驚きの実験が、フランスのパリにあるイエナ宮で始まっています。2020年01月12日現在、全国から「くじ引き」で選ばれた150人の一般市民が気候市民会議の議員となり、2030年までに温暖化ガスを大幅削減するための具体的な政策作りに挑んでいるのです。最終案は2020年04月に発表される予定で、まさに新しい政治の形が産声を上げようとしています。

この画期的な試みは、社会現象となった「黄色いベスト運動」の混乱を収束させるため、マクロン大統領が提案しました。議員の構成は、年齢や職業、学歴などが実際のフランスの人口比率にぴったり合うよう調整された、まさに「縮小版のフランス社会」です。SNS上でも「プロの政治家に任せるより、一般の感覚が反映されて面白い」「自分に責任が回ってきたら緊張する」など、当事者意識の高まりを歓迎する声が数多く寄せられています。

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現代人が抱える「幼児化」という病理に抗う

政治をプロに丸投げして不満だけを言う時代に終わりを告げるこの試みですが、背景には2010年代に露呈した民主主義への深い失望があります。社会心理学者の加藤諦三氏は、現代社会の裏で「人々の幼児化」が進んでいたと鋭く分析しています。民主主義とは本来、誰もが少しずつ我慢を重ねることで成り立つシステムです。しかし、努力せずに何でも手に入る便利な世の中が、欲求を抑えられない幼児のような心理を人々の心に育ててしまいました。

この潜伏していた幼児性は、トランプ米大統領のような指導者に刺激され、今や世界中で急速に表面化しています。自分の思い通りにならないと怒り、複雑な問題を一瞬で解決してくれる独裁者を求めてしまうのです。このような衆愚政治(理性を失った民衆による大衆迎合的な政治)への危機感に対して、私自身も深く共感せざるを得ません。だからこそ、市民自らが責任を持って議論に参加する「くじ引き民主主義」は、大人としての理性を探る重要な一歩となるでしょう。

「決めすぎる政治」の暴走を日本はどう防ぐか

この危機は日本にとっても他人事ではありません。2012年以降の安倍政権は選挙で圧勝を続けてきましたが、2019年07月21日の参院選での自民党の絶対得票率は約18.9%と、全有権者の2割を切っています。つまり「1強」の裏には、膨大な数の消極的な「NO」の声が隠れているのです。北海道大学の吉田徹教授は「民主主義にはイノベーションが必要だ」と語り、数の力だけで突き進む「決めすぎる政治」を見直す必要性を訴えています。

現在の日本の政治は、少数派である野党のチェック機能が十分に働いていません。議席数が民意を完璧に反映しているわけではない以上、国政調査権(国会が国政に関する調査を行う権利)の発動条件を緩めるなど、議論のバランスを整える仕組みが急務です。熟議の政治には時間もコストもかかりますが、現代にはAIや量子コンピューターという強い味方があります。最新テクノロジーを活用して広く民意をすくい上げる仕組みこそ、私たちが目指すべき「民主主義3.0」の姿ではないでしょうか。

紀元前4世紀に哲学者プラトンは、民主主義が行き過ぎると独裁者が現れると予言しました。現在の世界はまさにその危機に直面していますが、21世紀の私たちがその予言を覆せないはずはありません。2020年代を「分断」から「対話」への転換期にするためにも、まずは足元からの議論を始めましょう。まだ深刻な分断の手前で踏みとどまっている日本には、世界をあっと言わせる新しい民主主義のイノベーションを発信する資格が、十分に備わっているはずです。

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