やみつきの魔法!シンガポール発「塩漬け卵黄味スナック」が世界を席巻する理由とは?【1200円チップスの秘密】

シンガポール発の新しいグルメ旋風がアジアを熱狂させています。その主役は、なんと「塩漬け卵黄」で味付けされたスナック菓子です。2019年6月26日公開の日本経済新聞記事によると、シンガポール最大のショッピングモール「ビボシティ」の一角にあるチップス専門店「アービンズ・ソルテッド・エッグ」には、昼下がりにもかかわらず5〜6人の行列ができ、その人気ぶりがうかがえます。特筆すべきはその価格で、魚の皮のチップスなどは1袋あたり15シンガポールドル(日本円で約1200円)前後と、現地の物価水準を考慮しても高額ですが、それでも消費者は喜んで購入している様子です。

このブームの核となる「塩漬け卵黄」とは、アヒルの卵などを塩水に漬け込んだり塩にまぶしたりして作る、濃厚な甘みとコク、そして独特の塩気が特徴的な食材です。東南アジアでは古くから調味料として料理に少量用いられてきましたが、近年シンガポールではこれが主役級のフレーバーとして大流行しています。この人気は凄まじく、2018年のシンガポールにおける塩漬け卵黄の輸入量は3000トンを超え、その波はドミノピザやマクドナルドといったグローバルチェーンにまで及び、塩漬け卵黄味の商品が次々と登場しています。

ブームの火付け役となったのは、2015年に創業した「アービンズ・ソルテッド・エッグ」です。創業者のアービン・グナワン氏は、これほどの人気急拡大を予測していなかったと日本経済新聞のインタビューで語っています。彼は、新しい商品が少なかったシンガポール市場にとって、この塩漬け卵黄フレーバーが新鮮だったのではないかと分析し、一時はアイスクリームやチョコレートなど、あらゆる商品にこの味が取り入れられる現象が起きたと苦笑いを浮かべています。このブームに乗って、従業員3人の小さなキッチンからスタートしたアービンズは、わずか4年間で6カ国・地域で21店舗を展開し、社員数300人規模の企業へと急成長を遂げたのです。

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🍜 インドネシアからシンガポールへ、異色の経歴を持つ創業者の挑戦

グナワン氏はインドネシア生まれの33歳(記事制作当時)です。幼少期にスハルト政権崩壊に伴う混乱を避け、ご両親とともにシンガポールへ移住しました。オーストラリアの大学を卒業後、シンガポールに戻り、セントラルビジネス地区(CBD)でインドネシア料理店を開業します。CBDは物価が高く、オフィスアワー以外は客足が鈍るため、飲食店経営が難しいエリアとして知られていました。この海鮮料理店で、彼は初めて塩漬け卵黄味のチップスを提供したのですが、当初はあくまで料理の付け合わせだったのです。しかし、その評判があまりにも高かったため、テイクアウト用の袋詰めスナックとして販売を開始しました。

レストラン事業自体は経営不振に陥ってしまいましたが、チップスの売れ行きは好調でした。そこでグナワン氏は、レストランを閉鎖し、期間限定でチップス専門店として再出発するという大胆な決断をします。この専門店が、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で大きな話題となり、事業は瞬く間に拡大。ついにはビボシティに常設店を構えるまでの成功を収めました。SNSでの反響は非常に大きく、多くのユーザーが「一度食べたら止まらない」「中毒性がある」「シンガポール土産の定番」といったコメントを投稿し、その評判が国境を越えて広がる結果となったようです。

現在、アービンズの主な顧客は観光客であり、海外からの旺盛な需要を取り込むため、シンガポールの空の玄関口であるチャンギ空港にも旗艦店を開設しています。顧客構成は20代から40代が約7割を占め、女性が約7割という傾向が見られます。この人気は売上にも直結しており、2017年以降、売上高は3倍にまで増加しました。フィリピン、4店舗、香港4店舗、台湾、韓国、タイにそれぞれ2店舗と、海外展開も積極的に進められています。

💡 高品質へのこだわりと次なる戦略

さらに興味深いのは、インドネシアから業者がシンガポールへ大量に商品を買い付けに来て、自国でインターネットを使って転売する、いわゆる「ブローカー」や「ネット通販」が活発化している点です。グナワン氏はこれをネガティブに捉えるのではなく、「良い宣伝になっている」と容認する姿勢を見せています。また、生産拠点をコストの低い国に移さず、あえてシンガポール国内に留めるというこだわりを持っています。これは、シンガポールでの生産が一定の品質を保証することに繋がり、消費者が1袋15シンガポールドルという高価格であっても、喜んで支払う理由になっていると考えているからです。高品質への揺るぎないコミットメントが、この「プレミアムスナック」の価値を高めていると言えるでしょう。

アービンズは未上場であり、外部からの出資を受けず、グナワン氏の兄弟2人がそれぞれ最高財務責任者(CFO)と事業責任者を務める家族経営の体制を維持しています。現在の焦点は、塩漬け卵でコーティングする商品のラインアップを増やすことですが、長期的には、この現在のブームが弾けてしまう前に、次の流行を見つけ出すことに力を入れています。グナワン氏は、「今のブームが今後10年続くのをただじっと待っているわけにはいかない。次のブームも自分たちで生み出さなければいけない」と、現状に甘んじることなく挑戦し続ける強い意志を示しました。革新的なフレーバーと高品質への徹底したこだわり、そして時代の流れを読み解く戦略眼こそが、アービンズをアジアのヒットメーカーへと押し上げた原動力だと確信しています。

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