競争激化のEV市場を避け、GSユアサがHV用電池で活路!福知山に300億円投資で挑む次世代戦略

電池大手のジーエス・ユアサコーポレーション(以下、GSユアサ)が、ハイブリッド車(HV)向けのリチウムイオン電池事業に、新たな局面を迎えています。同社は、約300億円もの巨額な投資を行い、HV用リチウムイオン電池の新しい生産棟を建設する計画を2019年6月26日に発表いたしました。この新生産棟の候補地として最も有力視されているのは、同社がホンダと共同出資しているブルーエナジー(京都府福知山市)の工場敷地内です。この戦略は、電気自動車(EV)用電池への積極投資を続けるパナソニックや中国のCATL(寧徳時代新能源科技)のような巨大メーカーとは一線を画し、あえて競合の少ないHV用電池市場に活路を見出す「選択と集中」の明確な意思を示すものでしょう。

現在、ブルーエナジーはGSユアサが51%、ホンダが49%を出資する体制で、ホンダ向けのHV用電池のみを製造し、稼働率は約8割に達しています。しかし、今回の増産は、ホンダ以外の自動車メーカーへの採用にも目処がついたため、2022年頃には生産能力を大幅に引き上げる予定となっています。この動きは、関西地域における電池産業の更なる成長を予感させるものです。大阪税関のデータによると、関西地方の電池輸出額は年間約2,700億円に上り、これは国内全体の5割近くを占める重要な産業拠点となっています。

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HV用電池とEV用電池の明確な違いとGSユアサの技術優位性

次世代車に搭載されるリチウムイオン電池は、EVとHVでは求められる性能が大きく異なります。EV駆動用の電池が、一度に蓄えられるエネルギー量、すなわち「容量」の大きさが重視されるのに対し、HV用の電池は、頻繁に充電と放電を繰り返しながら車両の加速や減速を支える「出入力(しゅつにゅうりょく)」という能力で、より高い性能が求められるのです。少ないエネルギーで高効率な走行を実現するためには、電池自体の重量を軽くして車体全体が重くなりすぎないようにすることも極めて重要になります。また、次世代車には多くの部品が搭載されるため、電池に割けるスペースは限られており、高い「小型化」の技術も不可欠となっています。

GSユアサは、このHV用電池に求められる特性を高いレベルで実現する独自の強みを持っています。それは、電池内部の電気抵抗を小さくする独自技術によって、小型化と高い出入力性能を両立できる点です。最新の電池モデルでは、従来品と比較して、重量を約17%、サイズを約7%小型化しつつ、出力を約13%も向上させているという驚くべき成果を達成しています。これはまさに、同社が長年培ってきた電池技術の結晶であり、今後のHV市場での大きな武器になるに違いありません。

成長を続けるHV市場への期待と事業見通し

GSユアサの車載リチウムイオン電池事業は、現状、ホンダのHV車用と、三菱自動車のプラグインハイブリッド車(PHV)用が大部分を占めています。2019年3月期の売上高は前期比2%増の455億円を達成し、この事業などが牽引役となり、連結売上高も1%増の4,130億円となりました。そして、2020年3月期にはさらに4%増の4,300億円という過去最高を記録する見込みです。英調査会社のIHSマークイットの試算によれば、簡易HVを除くHVの世界市場規模は、2018年の230万台から、2030年には3倍近い663万台にまで膨らむと予測されています。これは、同じく2030年には2018年比で9倍近い1,223万台に達すると見られるEV市場と並び立つ、非常に有望な成長市場と言えるでしょう。

一方、世界的な潮流として、中国が国策としてEV普及を掲げていることから、HV市場の成長が予想通りに進まないリスクも指摘されています。しかし、GSユアサがHVに特化する戦略の利点は、主な同業他社がトヨタ自動車子会社のプライムアースEVエナジーなどに限られており、競合相手が少ない点です。現在、同社の連結売上高の約7割を占めるエンジン車用の鉛蓄電池市場は今後の大きな拡大が見込めませんから、同社にとって、車載リチウムイオン電池事業は今後の最重要事業として位置づけられているのです。同社は2019年5月に発表した新中期経営計画において、2022年3月期までの3年間を「投資先行期間」と定め、研究開発費を含めて約800億円を車載リチウムイオン電池事業に投じる方針です。

SNSでの反響と編集者としての見解

このGSユアサのHV特化戦略の報道に対し、SNSでは「賢明な戦略だ」「EV市場の競争は激しすぎるから、ニッチな市場で勝負するのは面白い」といった肯定的な意見が多く見受けられました。一方で、「EVシフトの流れは止められない。HVはあくまで過渡期の技術ではないか」という将来の市場動向を懸念する声も一部にあります。

編集者として、私はこのGSユアサの決断を高く評価いたします。自動車の電動化は世界の不可逆的なトレンドですが、現時点ではインフラやコストの問題から、EVが万能というわけではありません。特に日本では、燃費性能に優れるHV車は今後もしばらくは重要な選択肢であり続けるでしょう。巨大なEV市場で、すでに強大な資本力と技術力を持つ企業と正面からぶつかるのではなく、技術的な優位性を活かせるHVという分野に焦点を絞り、先行者利益を追求する戦略は、まさに「大局を見据えた名采配」と言えるでしょう。この300億円の投資が、同社の今後の飛躍の礎となることを期待しています。

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