私たちの生活を支えるインフラや建物を生み出す建設現場ですが、常に危険と隣り合わせであるという課題を抱えています。命に関わる労働災害を撲滅し、経験の浅い若者でも安心して働ける環境を整えることは、将来の担い手を育てるためにも避けては通れません。このような状況のなか、大手ゼネコン各社はテクノロジーを駆使して現場の危険を根本から排除する技術開発に注力しています。SNSでも「これなら安心して働けそう」「職人不足の救世主になってほしい」と、大きな期待を寄せる声が相次いでいる状況です。
特に地下深くを掘り進める工事では、目に見えない脅威が潜んでいます。その代表例が「ニューマチックケーソン工法」と呼ばれる、地下に巨大なコンクリート構造物を沈めていく特殊な技術です。この手法は、地下水の浸入を防ぐために作業空間の気圧を意図的に高める特性を持っています。高気圧の環境から急に通常気圧の場所へ戻ると、重い潜水病を患う危険性があるため、これまでは極めて慎重な管理が求められていました。また、均一に掘削しないと構造物が傾いてしまうため、管理の難しさも課題となっています。
これまでも遠隔操作のショベルカーは導入されていましたが、地盤の削り具合を確認するため、1日に1回は作業員が危険な地下に降りて計測する必要がありました。そこで鹿島は、三菱電機と共同で人が地下に入らずに土砂を計測できる革新的なシステムを開発しています。これはレーザースキャナーと人工知能(AI)を連携させたものです。AIがショベルカーの影になって死角になる部分の地形を予測するため、完全な無人化作業へと一歩近づいています。人身事故を未然に防ぐ画期的な一手になるでしょう。
こうした安全管理への取り組みは、建設業界にとって最優先のミッションです。厚生労働省が発表した2017年の調査によると、労働災害による年間死亡者数は全産業合計の978人のうち、建設業が323人と約3割を占めています。事故件数自体は減少傾向にあるものの、他業界と比べても突出して多いのが現状です。さらに深刻化する人手不足を補うためにも、少ない人数で施工できる「省人化(人間の作業を機械に置き換えて省力化すること)」の技術開発は、現場の安全性を高める上でも急務となっています。
ロボットが自動で溶接や搬送を行う建築のニューノーマル
比較的スペースに余裕がある土木工事で先行していた省人化ですが、建築工事でも急速な進化を遂げています。清水建設は、建物の柱を溶接する作業や、天井ボードの設置、さらには重い建築資材の搬送までを自動で行うロボットの開発に注力しています。同社は今春、東京都江東区に2箇所目となる新しい技術研究所の建設に着工する予定です。ここでは大学や新興企業との共同研究も視野に入れており、建設現場におけるAIやITの活用を一気に加速させる構えを見せています。
一方で、インフラの点検作業を効率化するだけでなく、そもそもメンテナンスを不要にする逆転の発想も生まれています。三井住友建設が開発したのは、鉄筋を一切使わない画期的な橋です。錆びない特性を持つ「アラミド繊維(強靭で耐熱性に優れた最先端の合成繊維)」を特殊なコンクリートに埋め込むことで、従来の鉄筋コンクリートが抱えていた腐食リスクを完全に克服しました。点検作業そのものを減らすアプローチは、現場の安全確保に大きく貢献するはずです。
このように、最新テクノロジーの導入は単なる効率化に留まらず、働く人の命を守る強力な盾となっています。私自身、建設業の「3K(きつい・汚い・危険)」という古いイメージは、これらの技術によって過去のものへと塗り替えられつつあると感じます。AIやロボットの活躍によって現場の安全が担保されれば、若者にとって魅力的なイノベーション業界へと生まれ変わるでしょう。技術革新がもたらす安心な未来に、今後も目が離せません。
コメント