人前で話すことが苦手だった内気な少女が、いまや多くの人々を魅了する美術史家として活躍しています。工芸青花の編集委員を務める金沢百枝さんは、2020年01月25日の時点で、自身の歩みをそのように振り返りました。植物や美術を相手にする研究職なら社交性は不要だと考えて選んだ道でしたが、初めて大学の教壇に立った際は緊張で立ち尽くしたそうです。そんなシャイな彼女が、青花の会の講座を毎月5年間も継続できたのは、奇跡のようだと語ります。
金沢百枝さんが講師を務める「キリスト教美術をたのしむ」という講座には、20代から80代まで幅広い層が全国から集まります。キリスト教美術とは、イエス・キリストの生涯や聖書の物語を題材にした絵画や彫刻、建築などの視覚芸術を指す専門用語です。一回ごとの募集ながら、参加者たちは単なる受講生を超えて「仲間」や「同志」のような絆で結ばれています。SNS上でも「金沢先生の解説で美術の奥深さに目覚めた」と、温かい反響が広がっているのです。
この素敵な集まりを企画する「青花の会」は、雑誌『工芸青花』の編集長である菅野康晴さんが2014年に立ち上げました。書籍の刊行だけでなく、茶話会や骨董祭、東京の神楽坂にある展示室での展覧会など、多彩な活動を展開しています。彼らが掲げる共通の目的は、現代の「ファスト化」への抵抗です。効率やスピードばかりが重視され、大量生産・大量消費が主流となる現代社会において、手仕事の温もりや伝統的な手工芸を応援する姿勢を貫いています。
その象徴ともいえる雑誌『工芸青花』は、布張りの装丁に箔捺しが施され、古布の実物などが貼付された工芸品のような美しい佇まいを誇ります。流行を追わず、100年後の読者にも届く内容を厳選する姿勢には、メディアの編集者として私も深く共感いたします。一過性の情報が溢れる現代だからこそ、時間をかけて作られた本物の価値を未来へ残す意義は極めて大きいでしょう。技術が進歩する今、何を残すかは私たち現代人に委ねられているのです。
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