2019年6月27日に東京証券取引所などが発表した2018年度の株式分布状況調査の結果は、「ニッポン株式会社」の株主構成に静かなる変化が起きていることを示しています。長らく低下傾向にあった個人投資家による日本株の保有比率が、金額ベースで17.2%と3年ぶりに上昇したのです。これは、日本の株式市場にとって非常に意義深い転換点と言えるでしょう。
長引くバブル崩壊後の株価低迷の影響を受け、個人の日本株保有比率は低下の一途を辿ってきました。1970年度には約38%を占めていた比率は、1990年度には約20%まで落ち込み、近年は高齢層の保有株が相続などで手放される動きも加わり、2017年度には過去最低の17%を記録しました。しかし、2018年度にはこの流れが変わり、株式数ベースでも個人・その他の保有は前年度比で10%近く増加、延べ株主数も5473万人と前年度から343万人も増える結果となりました。新規株式公開(IPO)や株式分割による増加分を差し引いた実質ベースでも、新たに192万人が株式投資を始めたり、買い増したりしたとのことで、個人の資金が再び日本株市場に戻りつつあることが分かります。
年金不安が後押し!若年層が牽引する「積立投資」ブーム
この個人回帰の背景にあるのは、特に若年層を中心とした「自助努力による資産形成」の意識の高まりです。将来の公的年金に対する不安から、「自分で老後の資金を準備したい」と考える人々が着実に増えているのです。例えば、2019年6月25日に開催された楽天証券のインターネットセミナーでは、資産形成の基本に関する初歩的な質問が相次ぎ、動画の視聴者数が前年より3割増えるなど、若者たちの関心の高さが伺えました。IT系企業に勤める27歳の男性が「将来の備えのために投資を始めた」と語るように、将来を見据えた動きが活発になっているのでしょう。
このような意識の変化は、具体的な行動として「長期の積立投資」の増加に表れています。例えば、楽天証券における一定額を自動で積み立てる投資サービスの設定件数は、2019年3月末時点で約124万件弱と、前年同期比でなんと64%も急増しています。さらに、値上がり益などが一定額まで非課税になる「少額投資非課税制度」、通称**NISA(ニーサ)の利用者数も右肩上がりです。金融庁のデータによれば、NISA口座数は2018年末時点で約1150万口座に達し、制度開始から4年間で4割も増えており、多くの個人にとって身近な資産形成の手段となっていることが見て取れます。
また、確定拠出年金制度の愛称であるiDeCo(イデコ)**についても、楽天証券のセミナーで初歩的な質問が相次いだことからも、若年層が将来の年金不安に対応するために、国が用意した税制優遇制度を積極的に学び、活用しようとしている姿勢が明確に浮かび上がります。この若年層による「つみたて投資」の増加は、今後の日本の資本市場を支える重要な柱へと成長していく可能性を秘めているのではないでしょうか。
投資信託も過去最高を更新!分散効果の高い「インデックス投信」に注目
個人の日本株回帰を支えるもう一つの大きな流れとして、投資信託(とうししんたく)を通じた間接的な株式保有が増加している点も挙げられます。投資信託の日本株保有比率は8.4%と1.2ポイント上昇し、4年連続で過去最高を更新しました。これは、ファンドマネージャーなどの専門家が投資家に代わって資産運用を行う金融商品への信頼と需要の高まりを示しています。特に個人の積立投資では、市場全体の値動きに連動することを目指し、複数の銘柄に分散投資することでリスクを軽減する効果が高いインデックス投信(上場銘柄全体を保有する投資信託)に資金が向かうケースが多いのです。
一方で、海外投資家の動向を示す「外国法人等」の保有比率は29.1%と、6年ぶりの低水準になりました。これは、短期的な売買を繰り返すヘッジファンドなどが含まれる海外勢の動きとは対照的です。個人の日本株回帰の動きは、単なる資産形成の手段に留まらず、「国内発の落ち着いたマネー」の力を強め、日本の株式相場や企業が資金を調達する環境を安定させる効果も期待できるでしょう。SNSなどでも「老後資金は自分で作る時代」「NISAで投資デビューしました」といった声が多く見られ、この個人による資産形成の波が、日本の金融市場に新たな安定と活力を与えることを強く期待しています。
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