2019年5月28日朝に川崎市多摩区で発生した児童ら19人が殺傷された事件は、日本の防犯対策における重大な「死角」を露呈しました。今回の事件の現場となったのは、文部科学省が登下校の安全対策の一つとして推奨していたスクールバスの停車場所でした。「バス通学は安全」という前提が覆されたことで、児童が巻き込まれる事件が起きるたびに進められてきた学校や地域の取り組みにもかかわらず、「完全な安全」を確保する方策が見えないという厳しい現実が突きつけられています。
事件は、私立カリタス小学校(同区)に向かうスクールバスの停車場所で発生しました。両手に包丁を持った男が、登戸駅(同区)に到着し、学校までピストン輸送を行うバスに乗ろうとしていた児童らを次々と襲撃したのです。同校では、駅改札から停車場所まで教頭と教員が交代で立ち会い、児童の乗車を見守るという、手厚い対策をとっていたにもかかわらず、悲劇を防ぐことはできませんでした。
この事件がなぜ大きな衝撃を与えたかというと、スクールバスの利用が、国も推奨する安全対策の一つであったからです。文部科学省は2018年9月、全国の教育委員会などに出した通達の中で、「スクールバスなどを登下校の安全対策の観点から利用することも考えられる」と言及していました。同年に関係省庁と作成した「登下校防犯プラン」でも、スクールバスの導入を集団登下校やICタグなどと並ぶ安全対策として推奨していたのです。
しかし、この事件を受け、文科省の担当者は「スクールバスは児童見守りの強化策の一つだったが、(バスを)待っている所を襲われることは想定していなかった」と、その見通しの甘さを認めざるを得ませんでした。警察庁の調査でも、2015年から2017年の間に道路上で犯罪被害に巻き込まれた子ども(13歳未満)の人数は、登下校時にあたる午前7時と午後3時から5時に、はっきりとした2つのピーク(山)があることが明らかになっており、登下校時の対策強化は喫緊の課題でした。
子どもや生徒の安全対策は、2001年6月に発生した大阪教育大付属池田小の児童殺傷事件をきっかけに大きく進展しました。この事件後、学校では校門の施錠や防犯カメラの設置、ボランティアやPTAによる通学路の見守り活動などが各地で根付いています。2015年度には、小学校の99.3%、中学校の93.8%が通学路の安全点検を実施するなど、対策は進んでいたと言えるでしょう。それでも今回、スクールバスの停車場所という、いわば**「安全地帯」で事件が起きたことで、関係者に改めて大きな衝撃が広がっています。
SNS上では、この文科省の「想定していなかった」という発言に対し、「対策が後手に回っている」「安全対策は常に最悪を想定すべきだ」といった、行政への厳しい批判が殺到しました。一方で、「子どもがまとまっているバス停は、犯罪者から見れば襲いやすい標的だったのかもしれない」といった、専門的な視点からの指摘も寄せられています。
私自身の意見としましては、今回の事件は、「犯罪はどこでも起こり得る」という現実を突きつけ、従来の防犯対策を根本から見直す必要性を示しています。文科省は事件の詳細を把握したうえで、登下校防犯プランの検証や、通学路の安全点検の実施などの対策を決定する方針です。しかし、清永奈穂所長が指摘するように、「スクールバスは安全だと思われてきたが、子供がまとまっているため犯罪者が襲いやすいととらえる必要がある」のです。
今後の対策として、バス停に警備員を配置するなど、子どもたちが集まる場所での物理的な防御を強化することが求められるでしょう。加えて、清永氏は「不審者が来たらランドセルを捨ててでも逃げるなど、最終的に自分の身は自分で守るという教育**に低年齢のうちから力を入れてほしい」と語っています。行政、学校、地域、そして家庭が連携し、ハード・ソフト両面から、**子どもたちの「命を守る力」**を最大限に引き出すことが、この悲劇から学ぶべき最も重要な教訓であると言えるでしょう。
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