【2019年6月】米株高の裏側で囁かれる不安:利下げと米中貿易交渉の「いいとこ取り」は続くのか?

2019年6月のアメリカ株式市場は、歴史的な高値を記録する勢いを見せています。特にダウ工業株30種平均は、月間の上昇幅が1,700ドルを超え、このまま推移すれば史上最大の月間上げ幅を更新する可能性を秘めていました。この驚異的な株高の原動力となっているのは、主に二つの大きな期待です。一つは「アメリカの利下げ」への期待、そしてもう一つは「米中貿易交渉の前進」への期待に他なりません。

しかし、市場のムードとは裏腹に、これらの材料は本来、同時に実現することが難しい「いいとこ取り」の状態にあるため、その持続性についてウォール街では疑問の声が上がり始めています。例えば、米中の貿易摩擦が実際に緩和し、世界経済の不確実性が取り除かれれば、景気の下振れリスクは減少します。そうなると、アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)が緊急で利下げを行う必要性は薄れてしまうはずでしょう。

実際、6月26日のダウ平均終値は前日比11ドル安の2万6536ドルとなり、惜しくも続落に終わりました。昨年10月に記録した史上最高値(2万6828ドル)を目前に、市場の迷いが垣間見えるような足踏み状態が続いています。この記録的な株価の上昇が、果たして持続可能なものなのか、投資家たちはその行方を注意深く見守っていることでしょう。

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米中交渉への期待高まるも、FRBの真意は?

株価が上値を追う大きな要因となったのが、米中の貿易交渉に対する期待感の再燃です。スティーブン・ムニューシン米財務長官は、6月27日を目前に控えた週末の米中首脳会談について、中国側が「交渉を再開したい」という意向を示すことを望んでいると、CNBCのインタビューで述べています。彼は、交渉が中断する直前には「(妥結まで)約90%のところまできていた」とし、「交渉を完了させる道筋は存在する」と強い期待を表明しました。この発言を受けて、ダウ平均は一時100ドルを超える上昇幅を記録したのです。

さらに、ドナルド・トランプ米大統領が6月に入ってから、中国の通商政策を批判するトーンを弱めていることも、米中関係が改善に向かう可能性を示唆しています。バークレイズのマイケル・ゲイペン氏など、市場関係者からは「懸念が和らぐ可能性がある」との見方が増え、投資家心理を押し上げました。私見ですが、国際的な貿易摩擦が世界経済に与える影響は非常に大きく、一連の動きが和解の方向へ進むことは、経済の安定にとって間違いなくポジティブな進展と言えるでしょう。

しかし、米中貿易交渉の「前進」は、今度はFRBが市場が確実視する「利下げ」を本当に行うのかという、新たな不透明感を生じさせています。市場は7月のアメリカ連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げを織り込んでいますが、ジェローム・パウエルFRB議長は6月25日の講演で、具体的な7月利下げの言質を明確に与えることはありませんでした。

パウエル議長は、6月19日のFOMC後の記者会見とほぼ同じ論調で、貿易戦争を「大きな不確実性」と指摘しつつも、「景気拡大を維持するために適切に行動する」と述べるに留めました。一方で、アメリカの景気見通しについては「好ましい状態を保っている」と強調し、「金融政策は個々のデータや短期的な心理の振れに過度に反応すべきではない」という慎重な姿勢を示しています。すなわち、利下げはあくまで貿易戦争が景気の基本シナリオを揺るがす場合に備えるという論理に立脚していると理解すべきでしょう。

市場が7月の一気に0.50%の大幅利下げまで織り込むような前のめりな予想が広がったことで、FRBは政策の自由度を確保するため、市場の性急な緩和観測をけん制する必要があったと思われます。米中が歩み寄り、経済と金融市場が落ち着く状況になれば、利下げを見送るという選択肢を残しておくことが、今後の政策運営において重要になってくるのではないでしょうか。

利下げ観測へのブレーキとSNSの反応

FRB内からも、市場の利下げ観測にブレーキをかける発言が出ています。緩和に積極的な派閥とされるセントルイス連銀のジェームズ・ブラード総裁でさえ、6月25日のブルームバーグの取材に対して、「0.50%の利下げが必要な状況だとは思わない」と発言しました。ブラード総裁は、6月のFOMCでは0.25%の利下げを主張していたものの、一気に大幅な利下げが必要なほど景気が悪化しているわけではないという認識を示したわけです。

この発言は、市場の性急な利下げ観測を後退させ、6月25日から26日にかけて、金融政策に敏感な2年債の利回りが上昇する要因となりました。債券利回りの上昇は、株式市場の上値を抑える力として作用します。米中交渉が前進すれば世界経済の霧は晴れますが、その反作用として利下げの可能性が低下するというジレンマを、市場は今、直面しているのです。

こうしたウォール街の動向に対し、SNS上でも多くの意見が交わされています。「利下げ期待と貿易和解期待を同時に追いかけるのは矛盾している」「FOMC後のパウエル議長の発言は、市場を牽制したい意図が明確だった」といった冷静な分析が散見される一方、「結局、利下げも米中和解も、どちらか一つでも実現すれば株価は上がる」という楽観的な見方も根強く存在するようです。しかし、7月も市場が期待する「いいとこ取り」のシナリオで株価が上昇し続けるかは、非常に不確かになってきていると言えるでしょう。

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