タイ政府が、塩分を多く含む食品に対して課税する「塩税」の検討を本格化させています。対象となるのは、私たちの生活にも身近なインスタントラーメンやスナック菓子などで、含まれる塩分の量に応じて税額が決定される見通しです。東南アジア特有の濃厚な味付けを好む食習慣に加え、近年では女性の社会進出や経済成長に伴う加工食品や外食の普及が、国民の塩分摂取量を押し上げています。
この動きの背景には、深刻な医療費膨張への危機感があります。世界保健機関(WHO)のデータによれば、タイにおける高血圧の罹患率は、過去5年で1.2ポイントも上昇し、ついに25%にまで達しました。過剰な塩分摂取は高血圧や腎臓病といった生活習慣病の主要なリスク要因となります。東南アジアは塩分の摂りすぎが原因で亡くなる方が多い地域として知られており、超高齢化社会へと急速に突き進むタイにおいて、予防医療による財政の健全化は待ったなしの課題と言えるでしょう。
過去の失敗と今後の展望
世界的に見ても、塩税の導入はまだ稀な取り組みです。2011年にハンガリーで開始された「ポテトチップス税」が先行事例として挙げられますが、アジア圏では苦戦が続いています。実際、2019年にはフィリピンで導入計画が議会の強い反対に遭い頓挫しました。タイにおいても、2018年に一度検討されたものの、当時の財務大臣らから猛反発を受けて白紙に戻された経緯があります。SNS上でも「私たちの日常的な食事がさらに値上がりするのか」といった不安や、健康増進と生活コストのバランスを懸念する声が目立ちます。
しかし、タイは2017年に砂糖税を導入し、一定の成果を上げてきました。砂糖に続く「塩」という、より日常的で不可欠な調味料への課税は、単なる経済政策以上に、国民の食文化そのものを変えるほどの大きなインパクトを伴うはずです。編集者である私は、単に税を課すだけではなく、代替品の開発支援や減塩の啓発活動といった多角的なアプローチが、国民の理解を得るためには不可欠だと考えます。政策の成功には、税負担の議論を超えた健康意識の変革が必要となるのではないでしょうか。
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