2019年6月27日、東京商品取引所(TOCOM)における原油先物の価格が、前日の終値から大幅に反発しました。特に取引の中心となる期先の清算値は、1キロリットルあたり4万1400円となり、前日と比べて1070円も高値を付けたのです。この価格上昇の背景には、アメリカ合衆国(米国)の原油在庫が減少しているとの観測が高まったことと、米国とイランとの間で続く緊張関係が、中東からの原油供給に悪影響を及ぼしかねないという懸念が強く影響しています。これらの要因が相場を下支えする形となり、市場では買い注文が優勢となりました。
原油先物取引とは、将来の決められた期日に、原油という商品をあらかじめ定められた価格で売買することを約束する取引のことであり、原油の将来的な価格変動を見越して投資家が取引を行います。今回、価格が急伸した一つの大きな要因は、米国における原油在庫の動向です。米石油協会(API)が2019年6月25日に公表した最新の統計では、原油の在庫量が市場の事前予想を上回る水準で減少していることが明らかになりました。これに続き、2019年6月26日には米エネルギー情報局(EIA)による在庫統計の発表が予定されており、こちらでも在庫の減少が確認されるだろうという期待感から、投資家の間で積極的な買いが進んだものと見られます。
実は、この時点での米国の原油在庫は、過去約2年間で最も高い水準に達しており、これが以前から原油価格を押し下げる要因となっていました。しかし、足元の在庫減少観測によって、この下押し圧力が一時的に弱まったと言えるでしょう。また、為替市場の動向も短期的な買い材料として機能しました。米連邦準備理事会(FRB)の議長が2019年6月25日に、市場が期待していた早期の利下げ観測に対して否定的な見解を示したことで、外国為替市場では円安の動きが見られました。円安は、円建てで取引される東京市場の原油価格にとって割安感をもたらすため、短期的ながらも価格上昇を後押しする材料となったと、日産証券の菊川弘之主席アナリストは指摘しています。
緊迫する中東情勢が原油価格を支える構造
今回の価格反発の背景として、もう一つ、そして最も重要なのが、米国とイランの対立激化による地政学的リスクの上昇です。米国によるイランへの追加制裁に対して、イラン側が強い反発を示し続けている状況は、原油の安定供給に対する懸念を拭い去ることができません。中東地域は世界の原油供給の要であり、この地域での緊張が高まることは、供給途絶(きょうきゅうとぜつ)のリスクに直結します。
このため、市場では「当面は原油価格が下落しにくい」という見方が大勢を占めています。SNS上でも、「イラン情勢が不安定すぎて原油は怖くて売れない」「また燃料代が高くなるかも」といった懸念の声が多く見受けられ、投資家だけでなく、一般の消費者もこの地政学リスクに高い関心を寄せていることが伺えます。中東情勢の緊迫化が解消されない限り、原油価格は高止まりしやすいリスクプレミアムを含んだ水準で推移する可能性が高いでしょう。
私は、このような市場環境においては、投資家は地政学的なニュースに対して非常に敏感になり、一喜一憂しやすい状況にあると見ています。原油という資源は、経済活動の根幹を支えるものであり、その価格は世界経済の動向だけでなく、特定の地域の政治的な駆け引きによっても大きく左右されてしまうからです。この脆弱性が、今回の価格変動の大きな要因であり、今後も市場の鍵を握り続けるでしょう。
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