街中でふと聞こえてきそうな「ランチ、ケンタッキーにしない?」というフレーズ。これまでクリスマスパーティーの主役というイメージが強かったケンタッキーフライドチキンですが、いま、その戦略を大胆に転換し、株式市場から熱い視線を浴びています。運営会社である日本KFCホールディングスが、なんと27年ぶりとなる株価高値圏を記録しているのです。この快進撃の立役者は、2018年7月から導入された「500円ランチ」をはじめとする、日常使いを意識した新戦略にほかなりません。
この「500円ランチ」とは、午前10時から午後4時までの時間帯限定で、看板商品のオリジナルチキンやツイスターといった人気メニューをお得なセット価格で提供するものです。例えば、現在提供中の「ランチAツイスターセット」は税込550円。それぞれを単品で注文すると810円かかるため、3割以上もお得になります。まさに、一度はケンタッキーから離れてしまった顧客を、「手軽な日常食」として呼び戻すための戦略的な一手と言えるでしょう。
収益構造の変化と「ランチ」効果の真実
日本KFCの近藤正樹社長は、当初「日常使いを強調すると、クリスマスのような特別感が薄れるのでは」と懸念していたそうです。しかし、蓋を開けてみればその懸念は杞憂に終わり、逆に顧客層の拡大につながりました。実際、2019年12月の既存店売上高は前年同月比で4%増を記録。2018年7月からの18カ月間で、実に17カ月も前年実績を上回るという驚異的な安定感を誇っています。
この好調の凄みは、これまでの業績の偏りを解消しつつある点にあります。従来は、クリスマス需要で単価が高い商品が売れる10月から12月期に利益が集中し、逆に4月から6月期は赤字になることが定石でした。それが今期は、4月から6月期でも9億円強の営業黒字を確保。2019年4月から9月期までの営業利益は、前年同期比で約5倍の24億円にまで膨らみました。これは、単なる一過性の流行ではない「実力」を感じさせます。
SNSで広がる共感と市場の期待
SNS上でもこの変化は敏感にキャッチされており、「ランチの選択肢としてケンタッキーが定着した」「この価格でこのボリュームは満足度が高い」といった声が多く聞かれます。かつては市場から「知名度はあるけれど成長性に欠ける」と見られていた同社の株価も、ランチの集客力が本物であると認識されるやいなや、2019年12月には27年10カ月ぶりとなる3620円という高値をつけました。投資家の期待値は非常に高まっています。
今後の成長について、近藤社長は「ケンタッキーは年に一度しか利用しない、という顧客がまだ大半である」と語り、さらなる伸びしろを強調しています。また、専門家の間では、競合するコンビニ業界で時短営業が普及することが、テイクアウト需要を主体とするケンタッキーにとって追い風になるとの分析もなされています。ファストフード業界の競争は激しいものの、この「持ち帰り文化」という強みをどう活かすかが、今後の鍵を握ることになるでしょう。
私個人としても、ブランドの持つ「特別感」を維持しながら、「日常の幸福感」を同時に提供するマーケティングの巧みさには強く感銘を受けます。ただし、店舗が忙しくなればなるほど待ち時間が長くなり、顧客満足度が低下するリスクとも隣り合わせです。2020年2月中旬に発表される2019年4月から12月期の決算が、この好調を持続させるための新たなステップとなるのか、投資家のみならず多くのファンが注目していることは間違いありません。
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