2020年1月22日、栃木県佐野市にある第一酒造にとって、忘れられない一日が訪れました。2019年10月に襲来した台風19号により、酒蔵へ甚大な被害を受けた同社ですが、ついに新酒の初出荷を果たしたのです。泥水が蔵内に流れ込み、絶望的な状況に立たされたあの日から、ようやく一歩を踏み出すことができました。
この再開の裏側には、人々の温かい絆が存在していました。全国から駆けつけた約600人ものボランティアの皆さんが、泥の掻き出しや清掃に尽力してくれたおかげです。彼らの献身的な協力があったからこそ、例年より2ヵ月遅れとはなったものの、再び酒造りを再開できたのでしょう。
困難を乗り越えた「安寧祈念」の物語
今回出荷されたのは、「開華 純米吟醸 安寧祈念」を含む2種類です。特に「安寧祈念」という銘柄には、特別な想いが込められています。当初は2019年11月に行われた、天皇陛下の即位後初めての新嘗祭である「大嘗祭(だいじょうさい)」にあわせた販売を目指していました。しかし、被災により在庫の全量を廃棄せざるを得ないという苦渋の決断を迫られたのです。
それでも諦めず、すべてをゼロから造り直すことで、この完成にこぎつけました。SNS上では「ボランティアの皆さんの想いも詰まったお酒ですね」「これは絶対に飲んで応援したい」といった感動の声が溢れています。被災という逆境を乗り越え、こうして皆さんの元へ届けられる奇跡に、多くの日本酒ファンが心を打たれているようです。
復旧への途上で確信した、最高の一杯
現在、殺菌装置や貯蔵タンクといった設備は、まだ完全な復旧には至っていません。そのため、一部の工程では従来よりも多くの人手をかけてカバーしているのが現状です。島田嘉紀社長が「今年の冬は酒が造れないのではと不安だった」と語る通り、道半ばでの再出発であることは間違いありません。
しかし、島田社長は「例年以上においしいお酒ができた」と自信をのぞかせています。設備が整わない中でも、作り手の情熱が最高の酒を生んだのでしょう。2月以降の季節商品も順次出荷される予定ですので、ぜひ多くの人に、復興の光となったこの一杯を味わっていただきたいと、心から願っています。
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