国内アパレル業界が長年抱えてきた在庫問題の解決に向け、新たな一手が進められています。必要以上の商品供給によって値下げ販売が常態化すれば、企業の利益悪化は避けられません。この深刻な課題を打破するため、独自の分析ツールや最先端の人工知能、すなわちAIを活用した需要予測への取り組みが加速しているのです。
大手コンサルティング会社であるゴードン・ブラザーズ・ジャパン(東京・千代田)は、アパレル企業の在庫問題を解決する独自の分析ツールを開発し、その解決策を提示しています。同社の田中健二社長は、「『何となく』といった経験則や感覚に頼りがちだった部分を、データで視覚化することが極めて重要です」と強調されています。このツールは、個々の商品の売上高、在庫状況、そして在庫回転率といった主要なデータを総合的に分析し、企業の抱える真の課題を浮き彫りにします。そして、2019年6月から本格的な営業活動を開始しました。
具体的には、過剰在庫に悩む企業の主要な数値を、グラフや表を組み合わせた「ダッシュボード」と呼ばれる画面で表示します。ほぼリアルタイムの数字を把握できるため、現場の課題を迅速に特定しやすくなるのが大きな利点です。同社の強みは、単にツールを販売するだけでなく、「アパレル商品の在庫を処理するための販路」も保有している点にあります。このため、生産量の縮小も含めた具体的な解決策まで提案できると、同社の帥映マネージングディレクターは語っています。初期費用は500万円以下に設定されており、問題解決のための提案については別途費用が発生する仕組みです。
すでに、この取り組みは実績を上げ始めています。2018年末から出資先の玩具会社でツールの導入を進めた結果、不要な在庫を約2割も削減できる見込みであることが判明しました。今後は、ブランドイメージを毀損しないよう細心の注意を払いながら、具体的な施策を実施していく予定です。ゴードン・ブラザーズ・ジャパンには、すでに流通業や製造業など4~5社から引き合いがあり、田中社長は「初年度の目標は10社以上の導入」を目指していらっしゃいます。
💡AIが切り拓く需要予測の高度化
適正な在庫水準の維持は、どのメーカーにとっても長年の懸案事項ですが、天候や流行に左右されやすいアパレル業界では特に難易度が高いとされています。しかし現在、無駄な生産を極力抑制しようとする動きが、業界全体で広がりを見せています。
例えば、イオン系のカジュアル衣料品店であるコックスは、AIを用いた画像解析技術を持つニューラルポケット(東京・千代田)と提携しています。この仕組みでは、ファッションサイトやパリコレクションなど、インターネット上で検索可能な10代から40代の女性向け洋服画像をAIが解析します。これにより、色やアイテム、柄に関する過去数年間の露出回数を分析できるのです。このAIによる予測結果に、従業員の意見などを加味して最終的な生産量を調整します。この高度な仕組みは、同社の主力ブランド「ikka」などで売り出す2019年秋冬商品から、7月には導入される予定です。
また、世界的なアパレル企業であるファーストリテイリングが運営するユニクロも、AIを活用した生産計画の精度向上に熱心です。同社は2018年夏より、米グーグルと共同プロジェクトを開始しました。このプロジェクトでは、世界中で収集された膨大なデータを分析し、今後流行すると予想される色やシルエットを予測しています。AIを駆使することで、より精度の高い生産計画を策定し、適切な追加生産に活用していく方針なのです。消費者として見た場合、私としては、AIが予測した流行色やアイテムが実際に店頭に並ぶことで、よりトレンドを押さえた商品が手に入りやすくなるというメリットを感じています。
これらの先進的な取り組みは、従来の「売れたから作る」という後追い型の生産体制から、「売れると予測して作る」という先回り型の体制への大きな転換を意味するものです。AIとデータ分析による在庫の適正化は、アパレル企業の利益向上だけでなく、環境負荷の低減や、常に新鮮な商品を提供し続けることで消費者の満足度を高めることにも繋がるでしょう。特に、流行のサイクルが速いアパレル業界において、この技術はまさに救世主的な役割を果たすことになるのではないでしょうか。
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