2019年6月27日に公開された本記事は、富士市産業支援センター長を務める小出宗昭氏が、かつて運営に関わった「SOHO静岡」での苦闘と覚悟について語る、示唆に富む内容となっています。小出氏は、インターネットなどの環境を備えた小さなオフィス、つまりSOHO(ソーホー:Small Office Home Officeの略で、自宅や小さなオフィスで仕事をする働き方)を志す人々を支援するSOHO静岡の立ち上げ当初、大きな困難に直面されたようです。
開業初日は賑わったものの、その翌日からは一転して「閑古鳥が鳴く」状況となり、ご自身も大いに戸惑ったと述べています。13室用意された小さな事務所への入居は半分程度にとどまり、静岡県が積極的に広報活動を行ったにもかかわらず、反応は期待通りではありませんでした。このような支援施設は前例がないため、手探りでの運営となり、ロールモデル(模範となる実例や成功例)もなかったため、何をどう進めるべきか全く見当がつかない状態だったと打ち明けています。
この八方塞がりの状況で、小出氏は重要な気付きを得ます。それは、入居するベンチャー企業の経営相談に乗ることは、単にアドバイスを与えるだけでなく、自分自身も起業家と同じ目線に立ち、一緒になって走り抜けることではないか、というものです。SOHO静岡自体が立ち上がったばかりであり、自分もベンチャーの端くれであると認識することで、それまでの心の持ちようが180度転換したと表現されています。起業家と同様に、自分の頭で考え、自ら行動し、そして必ず結果を出すことを固く決意されたとのことです。
この決意は、静岡銀行に約20年勤務されていた経験と対比される形で語られています。銀行員時代の仕事の多くは上司からの指示に基づくものであり、「仕事」というよりも「作業」に近い感覚だったそうです。しかし、SOHO静岡での取り組みは、自らの意志で考え行動する「仕事」であり、そこに楽しさを見出していると、その喜びを熱く語っています。この仕事観は、現在に至るまで変わっていないと強調されています。
小出氏の活動の精神的な支柱となったのは、静岡銀行の経営理念である「地域とともに夢と豊かさを広げます」という言葉でした。入行以来、意識することはなかったというこの理念を、SOHO静岡の業務を通じて初めて深く認識したようです。ベンチャー企業や起業を志す人々とともに歩むSOHO静岡の仕事こそ、まさに「地域ファースト」、つまり地域を最優先に考える姿勢が不可欠であり、ご自身が果たすべき役割は地域貢献にあると明確に把握されたのでしょう。
さらに小出氏は、地域貢献の成果を「見える化」することに注力し始めます。「見える化」とは、曖昧な情報やプロセスを客観的に把握できるようグラフや数値などで視覚化すること、つまりここでは活動の成果を誰にでもわかる形にすることを意味します。銀行業界では小さな成果が軽視されがちであると指摘し、SOHO静岡では、ベンチャーや起業といった小さな動きを大切にする方針を打ち出しました。しかし、単にきれい事を言うだけでは何も変わらないため、小さな実績を積み重ねて「すごい」と言われるような「見える化」の仕組みが必要だと考えたのです。
インキュベーション施設(新しい事業の創出や企業成長を支援する施設)として、入居者のサポートは当然ながら重要ですが、小出氏は彼らが施設外の企業とも連携し、互いに切磋琢磨(せっさたくま:仲間同士が励まし合って向上すること)するよう、外部環境を意識させることも心がけました。また、静岡県内には他にも多くの起業家やベンチャー企業が存在するはずだと考え、彼らにも積極的に相談に来てもらうことを目指します。これにより、SOHO静岡は、単なるインキュベーション施設から、地域の中小企業支援室のような立ち位置へと変わっていったと述べています。これは、SOHO静岡に着任してから約3カ月後のことだそうです。読者の皆様も、この地域課題の解決に向けた小出氏の具体的な行動に、次回の記事で注目してほしいと思います。
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