自動車部品の世界的な大手メーカーである株式会社デンソーは、2019年6月26日に愛知県刈谷市の本社で株主総会を開催しました。この総会において、注目を集めていたのが、トヨタ自動車の豊田章男社長を取締役に選任する議案を含む、全4議案の可決・承認です。これにより、トヨタの創業者一族の出身者がデンソーの取締役に就くのは、2015年に豊田章一郎名誉会長が退任して以来、実に4年ぶりとなり、自動車業界の枠を超えた大きなニュースとして迎えられています。
今回の人事は、単なる役員の異動にとどまらない、重要な意味を持っていると考えられます。ご存知の通り、デンソーはトヨタグループの中核をなす「ティア1サプライヤー」です。ティア1サプライヤーとは、自動車メーカーに直接、大規模な部品やシステムを提供する一次取引先を指す専門用語ですが、近年はCASEと呼ばれる技術革新、すなわち「コネクテッド(Connected)」「自動運転(Autonomous)」「シェアリング(Shared)」「電動化(Electric)」の波が押し寄せており、その進化のスピードは劇的です。豊田社長のデンソー入りは、この難局において、グループ全体の連携を強化し、次世代技術の開発を加速させるという、両社の強い決意の表れと言えるでしょう。
この日の株主総会には、過去最多となる1,614名の株主が参加されました。近年、高齢ドライバーによる痛ましい交通事故が社会問題となっている背景もあり、株主からは特に「運転支援技術」に関する積極的な取り組みを求める質問が相次ぎました。これに対し、デンソーの有馬浩二社長は、「自動車メーカー(カーメーカー)や行政と緊密に連携し、誰もが安心で快適に移動できる暮らしの実現に向けて、全力を尽くしていく所存です」と、力強いコメントを述べています。
SNS上でもこの話題は大きな反響を呼んでおり、「トヨタがデンソーとの距離を縮め、CASE領域での開発スピードを上げようとしている証拠だ」「豊田社長が直接コミットすることで、デンソーの技術力がよりトヨタの戦略に直結する。期待しかない」といった、今後のグループ戦略に注目する声が多く見受けられました。この創業家出身者の「復帰」は、変化の激しい自動車業界において、技術と経営の両輪で世界をリードしていくための、盤石な体制を築く第一歩となるに違いないでしょう。