今、世界的な喫緊の課題となっている海洋プラスチックごみ(プラごみ)の削減に向けた取り組みが、日本各地で加速しています。年間少なくとも800万トンものプラごみが海へ流出しているとされる中で、2019年6月28日、29日に大阪で開催されるG20サミットでも、この廃プラ対策が主要なテーマの一つとして議論される見込みです。こうした環境意識の高まりを追い風に、地方自治体や中小企業による革新的な挑戦が注目を集めているのです。
特に、河川から海への流出を防ぐためのユニークな取り組みとして、関西発のスマートフォンアプリ「ごみマップ」が大きな反響を呼んでいます。これは、投棄されたごみをスマホで撮影し送信することで、地図上に散乱位置や画像が共有され、美化すべき場所を「見える化」するものです。このアプリの開発を主導したのは、大阪商業大学の原田禎夫准教授で、京都府亀岡市の保津川の舟下り沿岸の美化を進めるNPOの代表も務めていらっしゃいます。広大な河岸でボランティアが効率的に清掃を行うためのアイデアから生まれたこの取り組みにより、アプリ利用後、支流で計測されるプラごみは従来の約20分の1程度にまで減少したというから驚きです。
しかし、原田准教授は「ごみを拾うだけでは限界がある。政策対応が必要だ」と強く主張し、この美化運動が行政を動かしました。その結果、亀岡市は、全国でも初めてとなるプラスチック製レジ袋の提供を有料無料を問わず禁じる条例づくりに乗り出しています。小売店との調整は残るものの、2020年夏ごろの施行を目指しているとのことで、この先進的な動きには、SNSでも「いよいよ日本も本腰を入れ始めたか」「地元にも広まってほしい」といった期待の声が多く寄せられています。この亀岡市の挑戦は、国の動きにも先行する非常に意欲的な試みと言えるでしょう。
プラスチックの削減を後押しする西日本の取り組みは、政府の政策にも影響を与えています。原田義昭環境相(当時)は2019年6月の会見で、富山県の取り組みを「非常に先進的で参考になる」と評価しました。富山県は2008年に、全国に先駆けて全域でレジ袋の無料配布廃止を宣言し、消費者団体、小売事業者、行政が連携した協議会を設立して県民運動としてマイバッグの普及を推進しました。この地道な活動の結果、現在では協力店舗が500店を超え、消費者のマイバッグ持参率はなんと95%にまで達しています。この11年間で削減されたレジ袋は累計15億枚にも上ると試算されており、これは県民一人あたり約1,400枚を削減した計算になります。行政の「押し付け」ではなく、三者が協働したことが成功の大きな要因だと、県環境政策課は語っています。
富山県はさらに一歩進んだ目標を掲げており、次はコンビニエンスストアでのレジ袋削減に焦点を当てています。多忙な会社員が昼食の購入などでレジ袋を多用している点に着目し、協力企業を募って名刺サイズに折りたためるマイバッグを従業員に配布してもらい、買い物での持参を促す運動を2019年8月に開始する予定です。こうした「一歩先」を行く地方自治体の取り組みは、全国にプラスチックごみ削減の意識を広げるための重要なモデルケースとなっています。
「ごみゼロ」を宣言した先進事例と企業の革新的な挑戦
徳島県上勝町(かみかつちょう)は、2003年に自治体として全国で初めてプラごみを含むごみの完全な再資源化を目指す「ごみゼロ」を宣言し、国内外から注目を集めています。ここではプラごみだけでも8種類、全体では45種類にも細かく分類されており、その再資源化率は2016年度に8割を超え、国内平均を大きく上回る実績を達成しました。これほど煩雑な分別が実現できている背景には、地元のNPOによる町民へのきめ細やかな助言や指導と、「上勝ブランド」を向上させることへの住民の共感が不可欠でした。この「神勝(かみかつ)」の名は、海外メディアでも紹介され、年間1,000人以上の視察が訪れるなど、地域の誇りとなっているのです。
また、ごみ袋自体を環境に優しいものへ変えるというアプローチもあります。北九州市では、植物由来の原料を使った「バイオマスプラスチック」製のごみ袋の普及を推進しています。バイオマスプラスチックとは、石油などの化石資源ではなく、再生可能な生物由来の有機資源(バイオマス)から作られるプラスチックのことで、焼却しても二酸化炭素(CO2)の排出量を実質ゼロにする効果(カーボンニュートラル)が期待できます。市は2019年度は清掃ボランティア向けにこの袋を提供し、2020年度からは年間約6,500万枚が使われる家庭用ごみ袋に広げる計画です。コスト増は伴いますが、全面導入により年間約460トンのCO2削減効果を見込んでいるとのことです。
さらに、海洋に流出したがらくたやプラスチックが引き起こす生態系への影響も深刻です。環境省の2016年度の調査では、瀬戸内海の備後灘が漂流プラごみの密度で全国25海域中2番目に多く、大阪湾奥部も6番目に入っています。特に閉鎖的な海域では、ごみがたまりやすい傾向にあると環境省は指摘しています。香川県の日本ドルフィンセンターでは、過去にイルカがプラスチックごみを誤飲して死に至る事故が発生したことから、現在、イルカにプラごみを見つけて飼育員に届けるとエサがもらえるという訓練を実施し、誤飲防止に努めています。しかし、施設側も「海のごみが年々増えている感覚がある」と強い危機感を抱いている状況です。
G20サミットの開催地である関西では、関西広域連合が大阪湾にレジ袋が約300万枚も沈んでいると試算しており、琵琶湖などから流れ出るプラごみ対策として、2019年6月には流通業界などと連携組織を発足させました。美しい瀬戸内海の景観はインバウンド(訪日外国人)の評価も高く、その環境を守るため、2018年に設立された一般社団法人E.Cオーシャンズ(愛媛県八幡浜市)は、無人島や小島の調査・清掃活動に着手しています。プラスチックごみ問題は、もはや「誰か」の問題ではなく、私たち一人ひとりの行動や、地域・企業・行政の連携によって解決すべき喫緊の課題なのです。世界的な関心が高まる今こそ、これらの先進事例を参考に、全国で「脱プラ」に向けた取り組みを加速させるべきでしょう。
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