【LPG市場の地殻変動】米中貿易戦争の「報復関税」が日本にもたらす恩恵。ENEOSグローブ幹部が語る「米国産流入」の深層

2019年5月29日付の報道は、米中貿易戦争が、世界の**液化石油ガス(LPG)**の供給体制に、予期せぬ大きな変化をもたらしている実態を伝えました。LPGとは、家庭用燃料や工業原料として使われるクリーンなエネルギー源です。中国が米国からの輸入関税を引き上げたことで、本来中国に向かうはずだった米国産のLPGが、玉突き的に日本を含むアジア市場に流入し始めているのです。

ENEOSグローブの山本佳樹調達需給部長(当時)は、この需給動向について解説しました。当時、LPG価格は冬の需要期を脱したことで穏やかな推移を想定しており、おおむね原油相場に連動すると見ていました。しかし、供給面ではOPECの協調減産や米国によるイランへの制裁の影響で、原油に随伴して採れる中東産のLPGに引き締まり感が出ているという、複雑な状況を指摘しています。

米中貿易摩擦の影響は、数字に明確に表れていました。2017年に中国の輸入量の2割を占めていた米国産LPGは、関税引き上げ後の2018年後半には、中国への流入がほぼゼロに激減しました。SNS上では当時、「関税戦争がエネルギーの流れを変えている」「日本にとっては安く調達できるチャンスではないか」といった、国際情勢の動きを冷静に分析する声が上がっていました。

この中国への流入激減が、日本のLPG輸入構造に変化をもたらしました。山本部長は、米国産を輸入できない中国の業者との**スワップ(交換)**取引や、産地を指定しない調達によって、余剰感のある米国産が日本への流入を加速させたと分析しています。結果的に、日本のLPG輸入に占める米国産の割合が大幅に上昇し、今後もこの高水準が維持される見通しでした。

コラムニストとしての私の意見ですが、このLPG市場で起きている現象は、地政学リスクが日本のエネルギー安全保障に与える影響の大きさを象徴しています。米中対立は日本経済にとって大きな懸念材料ですが、一方で、供給源の多角化という日本の長年のエネルギー戦略の課題に対し、予期せぬ形で米国産という選択肢を増やしてくれました。これは、日本のエネルギー安定供給の上で極めて重要であり、国際的な混乱を合理的な調達戦略で乗りこなす、日本の商社の実力が問われていると言えるでしょう。

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