1990年代の後半から、中国のスタートアップ業界は目覚ましい発展を遂げてきました。その急成長の裏には、常にアメリカの投資家による多大な貢献があったといえます。なかでも有名な事例が、1999年にゴールドマン・サックスが行ったアリババへの投資です。約3億5000万円という資金は、創業者のジャック・マー氏らを支えただけでなく、企業の知名度を大きく引き上げる原動力となりました。
ゴールドマン・サックスはその後、大きな利益を得て撤退しましたが、近年のハイテク産業がもたらした巨万の富に比べれば、それはほんの一歩に過ぎません。欧米のベンチャーキャピタルは、中国の成長とともに莫大な恩恵を享受してきたのです。しかし、そんな蜜月の「黄金時代」も、今や終わりを告げようとしています。SNS上でも「一つの時代が完全に終わった」と、急激な変化を惜しむ声が相次いで寄せられました。
現在の足元を揺るがしているのは、米中間の激しい貿易摩擦や地政学的な対立です。お互いへの不信感から、両国間を行き来していた投資マネーの動きは、深刻な停滞期を迎えています。アメリカからの資金流入が途絶えたことで、中国のスタートアップ界隈には「資金調達の冬」が到来しました。これに伴い、企業価値が10億ドルを超える未上場企業である「ユニコーン」の評価額も、軒並み低迷を余儀なくされています。
調査会社のリポートによれば、アリババやテンセントといった中国を代表する主要IT企業のほぼすべてが、かつてはアメリカからの投資を受けていました。さらに、2000年から2019年前半までに支援を得た中国企業の3分の1は、逆にアメリカの企業へ投資を行っていた実績もあります。2018年には、米国から中国へのベンチャー投資額が174億ドルに達し、前年のほぼ2倍という驚異的なピークを記録しました。
ところが、2019年上半期にはその投資額がわずか13億ドルにまで激減し、下半期になっても回復の兆しは見えていません。この急激な冷え込みの背景にあるのが、国家間の政策と規制の強化です。アメリカ政府は、自国の高度な機密技術が中国へ流出することを強く警戒しています。さらに人権問題への懸念も重なり、2019年10月には中国の大手テック企業8社が、取引制限リストへ追加されました。
これにより、中国企業は米国の投資家やサプライヤーから事実上排除される形となっています。アメリカのベンチャーキャピタルは、中国におけるすべての投資計画を見直さざるを得なくなりました。同時に中国側も国内の規制を強めており、世界屈指の活況を誇った巨大市場が急速に凍りついています。ネット上では「イノベーションの分断が起きるのではないか」と、今後の技術発展を不安視する意見も目立ちます。
ここへ来て、行き場を失った膨大なマネーが次にどこへ向かうのかという疑問が浮かび上がってきました。アメリカの投資ファンドは、次なる投資先をインドや東南アジアの成長市場に求めるのでしょうか。今回の米中デカップリングは、双方にとって大きな痛手となるに違いありません。しかし同時に、この地殻変動がアジアの新たな地域から、未来のジャック・マーのような革新者を誕生させる呼び水になることを期待しています。
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