【フォード欧州大リストラ】1.2万人の削減と工場閉鎖が示す「EVシフト」の冷徹な現実とブレグジットの影

自動車業界に激震が走りました。米自動車大手のフォード・モーターは、2019年6月27日、欧州事業の大規模な構造改革案を発表しました。その内容はあまりに衝撃的で、欧州に拠点を置く全従業員の約4分の1に相当する、1万2000人もの人員を削減するというものです。かつて大衆車の代名詞として欧州の道を彩ったフォードが、生き残りをかけて大きな痛みを伴う決断を下したと言えるでしょう。

このリストラ計画には、人員削減だけでなく、製造拠点の閉鎖も含まれています。具体的には、2020年末までに英国のエンジン工場やフランスの変速機工場、ロシアの組立工場など、計5カ所の工場を閉鎖する方針です。さらにスロバキアの工場についても売却が決まっており、欧州内に現在24カ所ある製造拠点は18カ所にまで縮小されることになります。このニュースを受け、SNS上では「現地の雇用はどうなるのか」「一つの時代が終わろうとしている」といった、驚きと悲嘆の声が数多く上がっています。

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赤字脱却へ、EVと商用車への「選択と集中」

なぜ、これほどドラスティックな改革が必要だったのでしょうか。その背景には、欧州事業の深刻な不振があります。2018年12月期の欧州事業におけるEBIT(利払い・税引き前利益=企業が事業活動そのもので稼いだ利益を示す指標)は、3億9800万ドル(約430億円)の赤字を計上しました。大型車が好調で利益を上げている北米市場とは対照的に、欧州ではミニバンなどの販売が振るわず、2年連続の赤字に苦しんでいるのです。

この苦境を脱するためにフォードが活路を見出したのが、電気自動車(EV)へのシフトです。フォード欧州のスチュワート・ローリー社長が「環境に配慮したEVが我々の未来を握っている」とコメントしている通り、今後は新型のEV投入に社運を賭けることになります。また、昨今のネット通販の拡大需要を取り込むため、小型トラックなどの商用車部門にも注力する方針を打ち出しました。不採算部門を切り捨て、成長分野へリソースを集中させる戦略は、経営視点では合理的ですが、現場にとってはあまりに過酷な現実です。

「合意なき離脱」という不確定要素

フォードの欧州事業再建には、もう一つ大きな懸念材料が横たわっています。それが英国の欧州連合(EU)離脱、いわゆる「ブレグジット」です。もし英議会が離脱協定をまとめられずに「合意なき離脱」となれば、欧州大陸との間に関税が復活し、部品や完成車の物流コストが跳ね上がるリスクがあります。

フォード自身の試算によれば、合意なき離脱が現実となった場合、その減益要因は最大で10億ドルにも達するとされています。ただでさえ赤字構造からの脱却を図る中で、政治情勢によるコスト増は致命傷になりかねません。英国に主要工場を持つ同社にとって、ブレグジットの行方は、EVシフトの成否と同等かそれ以上に、経営の根幹を揺るがす不安定要素として重くのしかかっているのです。

編集後記:産業構造の転換点で問われるもの

今回のフォードの発表は、単なる一企業のリストラ報道として片付けることはできません。ガソリン車からEVへという「100年に一度」と言われる自動車業界の大変革期において、伝統的な自動車メーカーがいかに苦渋の決断を迫られているかを象徴しているからです。技術革新が新たな価値を生む一方で、これまで地域経済を支えてきた雇用や工場があっけなく失われていく現実は、私たちに資本主義の厳しさを突きつけます。

2020年末に向けた工場閉鎖が進む中で、退職を余儀なくされる従業員へのケアは十分になされるのか、そしてフォードは宣言通りEVで欧州市場を再び席巻できるのか。インターネットメディアの編集者として、この巨大企業の「痛み」を伴う再生のプロセスを、今後も注視していく必要があると強く感じています。

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