厚生労働省より、本日2019年6月28日に最新の雇用統計が発表されました。皆さんが最も気になるであろう5月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月から0.01ポイント低下し、1.62倍という結果になっています。7カ月ぶりの低下ということで、少しドキッとするニュースかもしれません。しかし、この数字だけを見て「景気が悪くなった」と判断するのは尚早です。まずは、この「有効求人倍率」という言葉について簡単におさらいしておきましょう。
有効求人倍率とは、全国のハローワークで仕事を探している求職者1人に対して、企業から何件の求人が来ているかを示す指標のことです。つまり今回の「1.62倍」という数字は、仕事を探している人1人につき、1.62件の求人が用意されている状態を指します。依然として「仕事を選ばなければ就職しやすい」という売り手市場であることに変わりはありません。では、なぜ今回数値が下がってしまったのでしょうか。
主な要因として挙げられているのが、記憶に新しい「10連休」の影響です。大型連休明けに、「そろそろ新しい仕事を始めようかな」とハローワークを訪れる求職者が一時的に増加したことが、倍率をわずかに押し下げる結果となりました。一方で、総務省が同日に発表した5月の完全失業率は2.4%で、こちらは前月と変わらず横ばいです。政府も「雇用環境は着実に改善が続いている」との見解を示しており、雇用全体が崩れているわけではないようです。
製造業に忍び寄る「米中貿易摩擦」の影
全体としては堅調に見える雇用情勢ですが、内訳を詳しく見ていくと、少し気がかりなデータも浮かび上がってきます。それは産業ごとの明暗です。先行指標とされる新規求人倍率は2.43倍と0.05ポイント低下しました。特に顕著なのが製造業の落ち込みで、新規求人数は前年同月比で8.8%も減少し、なんと4カ月連続で前年を下回っています。ここでは、世界経済を揺るがしている「米中貿易摩擦」の影響が、日本の現場レベルにまで波及している様子が見て取れるのです。
製造業が業績悪化への警戒感を強め、採用の蛇口を締め始めている現状は、私たちも注視しなければなりません。SNS上でも、「製造ラインの募集が減っている気がする」「景気の先行きが不安」といった声が散見され、現場で働く人々が肌感覚で変化を感じ取っている様子がうかがえます。一方で、宿泊業や飲食サービス業、運輸業などは依然として人手不足が深刻で、求人数は前年を上回っています。業界によって「人余り」と「人不足」の二極化が進んでいると言えるでしょう。
「前向きな失業」が増えている?
今回の発表で興味深いのが、完全失業者数が前年同月比で7万人増え、165万人になったという点です。「失業者が増えた」と聞くとネガティブな印象を持ちがちですが、その中身を見ると「自ら会社を辞めた(自己都合)」人が増えていることが分かります。これは、「今の環境ならもっと良い条件の会社に転職できるはずだ」という自信の表れとも解釈でき、労働市場の流動性が高まっている証拠と言えるのではないでしょうか。
実際に就業者数は6年5カ月連続で増加しており、正社員も24万人増えています。今の会社に見切りをつけて、より良い条件を求めて動く人が増えているのは、働く側にとってはチャンスの時期が続いていることを意味します。私個人の意見としては、製造業の減速は確かに懸念材料ですが、サービス業を中心とした内需が雇用の受け皿として機能している現状では、過度に悲観する必要はないと考えます。
とはいえ、製造業の求人減は景気後退のサインとなることも多いため、今後も米中の動向や世界経済のニュースにはアンテナを張っておく必要があります。これから転職を考えている方は、業界ごとの好不調の波をしっかりと見極め、タイミングを逃さないことが重要になってくるでしょう。変化の兆しが見え始めた2019年後半、これからの雇用情勢がどう推移していくのか、引き続き注目していきたいと思います。
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