【年俸制の落とし穴】残業代は出る?経営者が知るべき導入のリアルと成功の鍵【2019年最新版】

月給制から年俸制へ。2019年6月28日現在、働き方改革の波に乗って、給与体系の見直しを検討する企業が増えています。経営者である皆様の中にも、「成果主義を取り入れたい」「給与計算をシンプルにしたい」とお考えの方がいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、年俸制という言葉には、どこかプロ野球選手のような華やかなイメージと共に、「実力主義の厳しさ」や「ブラック企業化」といった不安な響きも付きまといます。

SNS上を見渡してみても、「年俸制になったら残業代が出なくなった」「来年の年収が保証されていないから不安だ」といった、労働者側の切実な声が散見されます。一方で、「成果を出せば青天井で評価されるチャンス」と意気込むポジティブな意見もあり、その受け止め方は千差万別です。今回は、弁護士の大空裕康先生の解説をもとに、年俸制導入のメリットと、経営者が絶対に踏み外してはならない法的な注意点について深掘りしていきましょう。

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年俸制=成果主義?そのメリットと誤解

そもそも年俸制とは、1年単位で給与総額を決定する制度のことを指します。最大のメリットは、会社と従業員の双方が向こう1年間の見通しを立てやすくなる点にあります。経営側としては人件費の予算管理がしやすくなり、従業員としては1年間の収入が確定することで生活設計が立てやすくなるのです。また、当年度の頑張りを翌年の年俸にダイレクトに反映できるため、モチベーションアップや、働かない社員との不公平感を解消する特効薬としても期待されています。

しかし、ここで私が編集者として警鐘を鳴らしたいのは、「年俸制=会社が一方的に決めていいもの」という勘違いです。賃金は労働契約の核心部分であり、従業員の生活を支える命綱です。たとえ会社側にメリットがあっても、基本的には個々の従業員から同意を得なければ導入はできません。強引な導入は、社員の心が離れるだけでなく、法的なトラブルの火種となりかねないのです。

就業規則の変更と「合理性」の壁

もし全従業員の同意が得られなかった場合はどうすればよいのでしょうか。実は、労働組合や従業員代表との協議を経て就業規則を変更することで、一律に導入する道も残されています。ただし、ここには高いハードルが存在します。変更内容に「合理性」が求められるのです。単に給与制度を変えるだけでなく、人事評価の客観性が担保されているか、不利益変更になっていないか等が厳しく問われることになるでしょう。

また、意外と知られていないのが「給与の支払い方法」です。「年俸制だから年に1回ドカンと支払えばいい」と思っていませんか? それは労働基準法違反です。同法では「賃金支払いの5原則」として、毎月1回以上、一定の期日に支払うことが義務付けられています。つまり、年俸額を12分割、あるいは賞与分を考慮して14分割や16分割にして、毎月支払う必要があるのです。結局のところ、キャッシュフローの観点では月給制とさほど変わらないのが現実といえます。

最大の落とし穴「残業代」の真実

そして最もトラブルになりやすいのが、時間外労働や休日出勤の扱いです。「年俸制だから残業代込みでしょ?」という認識は、極めて危険な誤解です。原則として、年俸制であっても法定労働時間を超えれば割増賃金(残業代)を支払う義務があります。年俸制はあくまで「基本給」の決め方であって、労働時間のルールまで無効にするものではないからです。

ただし、例外もあります。契約時に「年俸額の〇〇万円には、月〇〇時間分の固定残業代を含む」といった明確な合意があり、基本給部分と残業代部分が明確に区分されている場合に限り、別途の支払いが不要とされる判例も存在します。しかし、この設計が曖昧なまま導入してしまえば、後から未払い残業代を請求され、年俸制のメリットである「人件費の見通しの良さ」が崩壊しかねません。

編集後記:信頼関係なき制度改革は失敗する

最後に、私自身の意見を述べさせていただきます。年俸制は、正しく運用されれば、成果を出した人が報われる素晴らしい制度です。しかし、それを「残業代削減の道具」や「人件費カットの方便」として利用しようとすれば、必ず組織は疲弊します。2019年の今、求められているのは透明性の高い経営です。

制度の導入にあたっては、形式的な同意だけでなく、従業員との対話を尽くし、「なぜ年俸制にするのか」「どうすれば給与が上がるのか」を丁寧に説明することが不可欠でしょう。納得感のない制度変更は、優秀な人材の流出を招くだけです。経営者の皆様には、法律を遵守するだけでなく、働く人の心に寄り添った制度設計を切に願います。

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