【華為の奇策】米中貿易戦争の火種「国防権限法」訴訟、長期化を嫌うファーウェイが求めた早期決着の裏側

2019年5月28日、米中対立の最前線に立つ中国通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)が、驚くべき一手に出ました。同社など一部の中国企業製品を米政府機関が調達することを禁じる法律、**「2019年度米国防権限法」に対して起こした訴訟について、審理を省略して迅速な判決を求める「略式判決」**を米テキサス州の裁判所に申し立てると発表したのです。この法律は、米国の超党派の賛成と当時のトランプ大統領の署名を経て2018年8月に成立していました。

ファーウェイがなぜ、長期化しがちな国際的な訴訟で早期決着を望んだのか。その最大の理由は、取引先の動揺を抑えることにあったと推察されます。当時、米国政府による制裁は多岐にわたり、5月15日にはトランプ大統領が米企業によるファーウェイ製品の調達を事実上禁じる大統領令に署名。さらに翌日の16日には、米商務省が事実上の輸出禁止措置を発動するなど、制裁が激化していました。

この状況を受け、ファーウェイのサプライヤーや顧客の間では、同社との取引を一時停止するなどの動きが急速に広がり、ビジネスが停滞していました。最高法務責任者である宋柳平・上級副社長が米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)への寄稿で「当社の反論機会なく成立し、米憲法に違反する」と強く主張した背景には、裁判で自社の正当性を示し、一刻も早く市場の不安を鎮めたいという切実な願いがあったと言えるでしょう。

SNS上では当時、「スピード決着を求めるのは、取引先が離れるのを防ぎたいからだろう」「裁判で勝てば制裁が解けるわけではないが、メンツは保てる」といった、ファーウェイの苦境を指摘する声が多く見受けられました。この国防権限法は、2019年8月からは政府機関による調達を、さらに2020年8月からは関連企業との取引までを禁じるという、企業活動の根幹を揺るがす厳しい内容でした。

コラムニストとしての私の意見ですが、このファーウェイの動きは、現代の地政学リスクが企業法務に与える影響の大きさを象徴しています。通信インフラは安全保障と直結するため、法廷での正当性の主張だけでは解決しないのが現実です。しかし、裁判という「正攻法」を急ぐことで、取引先に対して「我々はまだ戦っている」という強いメッセージを送り、信頼を繋ぎ止めようとした経営戦略は、危機管理の一つのモデルケースとして記憶されるべきでしょう。

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