みなさん、健康診断を受けたのに、いつまでたっても結果が送られてこないとしたらどう思いますか?「もしかして重大な病気が見つかったのでは…」と不安で夜も眠れなくなるのではないでしょうか。まさに今、私たちの老後を支える「年金」において、これと同じような異常事態が起きているのです。2019年6月28日現在、厚生労働省がひた隠しにする年金の健康診断結果、いわゆる「財政検証」について、その不可解な遅れが波紋を呼んでいます。
そもそも年金制度には、2004年の改革以降、少なくとも5年に1度は長期的な財政状況をチェックするルールが定められています。これが厚労省の言う「年金の定期健康診断」こと、財政検証です。この検証における最大の焦点は「所得代替率(しょとくだいたいりつ)」という指標にあります。少し難しい言葉ですが、簡単に言えば「現役世代の給料に対して、受け取る年金がどのくらいの割合になるか」を示す数値のことです。
消えた検証結果とSNSでの不信感
政府はこの所得代替率について、将来にわたって「50%」を維持することを目標としています。つまり、現役時代の給料の半分程度は年金で保障しましょう、という約束ですね。今年は3回目の検証年にあたり、本来であれば私たちの未来の懐事情を占う重要なデータが示されるはずでした。検証のベースとなる経済前提については、専門家委員会によって2019年3月に既に6つのパターンが提示されています。
しかし、それから約3ヶ月半が経過した現在になっても、肝心の結果は発表されていません。前回の2014年には6月初旬には公表されていたことを考えると、今回の遅れは明らかに異例です。厚労省側は、高齢者の繰り下げ受給などのオプション試算に時間がかかっていると釈明していますが、これには疑問符がつきます。本来の計算結果自体はとっくに出せているはずだからです。
この不可解な沈黙に対し、SNSなどのネット上では「選挙前に都合の悪い真実を隠しているのではないか」「年金が破綻していることを言えないのでは」といった怒りと不安の声が渦巻いています。7月には参議院選挙が控えています。野党が指摘するように、選挙戦で与党に不利になるような衝撃的なデータが出たため、首相官邸が発表に「待った」をかけていると疑われても仕方がない状況と言えるでしょう。
選挙のための隠蔽か、国民のための情報開示か
私自身の編集者としての意見を言わせていただければ、このような情報の出し惜しみは、民主主義の根幹を揺るがす由々しき事態だと感じます。年金の仕組みは非常に複雑で、一般の私たちが詳細を完全に理解するのは容易ではありません。だからこそ、選挙という国の行く末を決める重要なタイミングで、各政党が正確なデータに基づいた議論を戦わせ、それを私たちが判断材料にする必要があるのです。
本来、社会保障審議会・年金部会の神野直彦部会長をはじめとする責任ある立場の人間は、政治的な思惑に左右されず、毅然として結果の公表を求めるべきではないでしょうか。それが、有権者である国民に対する誠実な態度というものです。野党が早期公表を求めるのは当然のことですが、ここは与党である自民党からも、政府に対して情報の開示を強く働きかけてほしいものです。
人間ドックの結果を隠されたまま、「元気です」と言われても誰も信用しません。年金という巨大なシステムへの信頼を取り戻すためにも、そして私たちが正しく未来を選択するためにも、厚労省は今すぐに財政検証の結果を明らかにすべきでしょう。私たち国民も、この「沈黙」が何を意味するのか、冷静に見極める目を持つ必要があります。
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