トルコ全方位外交の「綱渡り」を徹底解説!S400導入とリラ安の経済リスク、米中ロとの複雑な関係を読み解く

2019年6月26日、トルコのレジェプ・タイイップ・エルドアン大統領は、日本経済新聞の取材に対し、特定の国に偏ることなく、どの国とも等しい距離で関係を築く「全方位外交」を推進していく考えを表明されました。これは、21世紀のトルコ外交は「360度の全方位だ」とし、従来のヨーロッパ連合(EU)加盟を目指す西側寄りの姿勢から、外交方針を大きく転換する意向を示されたものです。

しかし、この綱渡りのような全方位外交は、多くの経済的・安全保障上のリスクを抱えています。トルコ経済は2019年1月~3月期まで2四半期連続で前年同期比マイナス成長(マイナス成長とは、国の経済規模を示す実質GDPが前年と比べて縮小した状態を指します)を記録しており、回復の鍵は、経済の不安定化の最大の要因となっている自国通貨リラの価値が下がるリラ安の解消にあります。そのためには、最重要の経済パートナーであるアメリカとの関係改善が不可欠ですが、現状ではその見通しが立たない状況が続いています。

大統領は、6月23日に最大都市イスタンブールで行われた市長選の再選挙が終了したことで「政治環境が安定し、構造改革が進む」と述べ、経済は2019年の後半には回復するという期待を示されました。しかし、市場では2019年を通じたマイナス成長に落ち込むとの懸念も根強く、実際、リラ安は歯止めがかからず続いています。リラの対ドル相場は、年初から1割近くも下落しており、これが加速すると、輸入品の価格が上昇し、国民の消費や企業による投資が冷え込み、さらなる経済の不安定要因となる恐れがあります。

特に、アメリカが強く反対するロシア製の最新鋭ミサイル防衛システム「S400」のトルコによる導入計画は、リラを一段と売り浴びせるリラ売りを誘発する可能性があり、市場の大きな懸念材料となっています。このS400は、近隣の大国であるロシアとの関係を重視し、安全保障戦略の一環として導入されるものですが、北大西洋条約機構(NATO)のメンバー国であるトルコが、仮想敵国ロシアの兵器を導入することは、西側諸国との間で深刻な亀裂を生み出しています。

トルコは、アメリカの最新鋭ステルス戦闘機「F35」の開発計画にも参加し、一部部品を供給するとともに、100機の購入を予定しています。これに対し、アメリカ政府は、S400を導入すればトルコをF35の開発計画から除外し、F35の引き渡しを拒否する構えを見せています。エルドアン大統領は「F35の代金はすでに支払った」と強調されていますが、もしF35が手に入らなければ、トルコの国防体制にも影響が及びかねません。

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🇺🇸🇷🇺🇨🇳 米国・ロシア・中国との複雑な関係と外交の課題

トルコがロシアとの連携を重視する背景には、隣国シリアからの難民流入問題があり、大統領は「シリアの内戦終結のため(ロシアと)連携している」と、安全保障上の必要性を指摘されています。また、アメリカと貿易戦争を続けている中国とも緊密な関係を築こうとされています。中国が進める広域経済圏構想「一帯一路」(ユーラシア大陸をまたぐ巨大な経済圏を築くためのインフラ開発計画)への協力を表明し、港湾などのインフラ整備を共に進めていく考えを示されています。

このように、トルコはアメリカと緊張関係にあるロシア、そして中国と、経済や安全保障の面でバランスを維持するという、極めて困難な外交的な「綱渡り」を続けているのです。利害が激しく衝突する大国間で等距離の外交を続けることは至難の業であり、私は、この全方位外交の実現には相当な覚悟と戦略が必要であると考えます。一つ間違えば、全ての国から不信を招き、国際社会で孤立するリスクも孕んでいるからです。

🇯🇵 日本との経済連携、原子力発電所計画の事実上の断念

対日関係については、トルコは経済連携協定(EPA)を「年内に合意したい」と前向きな姿勢を示されています。EPAとは、特定国との間で貿易や投資を促進するために、関税の撤廃や経済活動のルール作りを約束する協定のことです。トルコ側は、2019年6月28日から開催されるG20大阪サミットにあわせた安倍晋三首相との首脳会談で大筋合意することを期待されていたようですが、トルコが求める農産品市場の開放などの点で調整が続いており、実現には至っていない模様です。

エネルギー需要の拡大への対応に関して、大統領は「日本との協力は再生可能エネルギーでも可能だ」と述べており、今後、この分野での協力が進む可能性に言及されました。しかし、2013年に合意していた黒海沿岸のシノプにおける原子力発電所建設への日本の協力については、「期待通りには進んでいないのが実情だ」と話し、事実上の断念を確認されています。この背景には、三菱重工業などの日本側の見積もりが、コストや工期の面で当初の合意に沿っていなかったという説明がありました。

📱 SNSでも波紋を呼ぶトルコの外交戦略

エルドアン大統領のこの「全方位外交」とS400導入に関する発言は、SNS上でも大きな反響を呼んでいます。多くのユーザーが「リラ安の進行が怖い」「経済回復のために、まずはアメリカとの関係をどうにかすべきでは」といった、経済リスクへの懸念を表明されています。一方で、「トルコの地政学的な位置を考えれば、全方位外交は理解できる」「NATOの顔色をうかがうばかりではいけない」と、大統領の戦略に一定の理解を示す意見も見られます。特に、F35開発からの締め出しリスクは「国防に直結する問題だ」として、国際社会の注目を集めています。

トルコが今後、西側諸国、ロシア、中国という大国間の利害の衝突する場所で、いかにバランスを保ち、自国の経済と安全保障を守っていくのか。大統領が目指す「構造改革」がいつ経済回復につながるのか。このトルコの外交的綱渡りは、世界の政治・経済に大きな影響を与える注目のテーマとなるでしょう。

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