【目標先送り】米中摩擦の直撃で半導体製造装置市場に影。東京エレクトロンが挑む「ファーウェイ・ショック」と2兆円への道

2019年5月28日、半導体製造装置の世界大手である東京エレクトロンが、中期経営計画の説明会を開催しました。その中で示されたのは、実質的な売上高目標の先送りという、厳しい現実でした。従来、2021年3月期までに連結売上高で最大1兆7,000億円を目指していましたが、これを「今期から5年以内で最大2兆円」へと変更したのです。これは、当時の半導体業界を直撃していた米中貿易摩擦、特に中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への制裁問題が大きく影響しています。

河合利樹社長(当時)は具体的な言及を避けつつも、「米中摩擦で(業績の)不確実性が高まっている」と述べ、ファーウェイ問題が業績に暗い影を落としていることを認めました。ファーウェイに対する制裁により、同社のスマートフォン(スマホ)などの販売が減速すれば、そのスマホに使う半導体の需要が減り、ひいては半導体を作る製造装置の受注に直接響くという連鎖的な影響が懸念されたのです。前期に1兆2,782億円だった売上高は今期1兆1,000億円と14%減少する見通しとなり、従来の計画達成は極めて困難だと判断せざるを得ませんでした。

この不透明感は、業界全体の楽観的な見通しを一変させました。それまで半導体業界では「2019年半ばから後半にかけて需要が回復する」というスーパーサイクル論が根強く囁かれ、半導体株指数も最高値を更新していました。しかし、状況は一転し、J.P.モルガン証券のアナリストが半導体市場の回復時期を2019年10月から2020年1月に変更するなど、下方修正の動きが相次いでいました。SNS上では、「ファーウェイショックがここまで影響するとは」「製造装置メーカーは景気の波を避けられない」といった、市場の急変に対する驚きの声が広がりました。

しかし、東京エレクトロンは手をこまねいているわけではありません。今後の成長への「種まき」として、今後3年間で4,000億円という巨額の研究開発投資を実施すると発表しました。これは、次世代通信規格**「5G」や、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」**の普及によって、中長期的にはデータセンター向けなどで半導体市場が拡大するという見通しに基づいています。また、説明会に先立つ27日には1,500億円の自社株買いも発表し、株主還元で企業価値を高める姿勢を強くアピールしました。

コラムニストとしての私見ですが、多額の研究開発投資と株主還元は評価できますが、シェア拡大に向けた具体的な戦略に欠けている点が気がかりです。売上高営業利益率は20%を維持するものの、売上が伸びなければ利益の額も下がりかねません。米中摩擦という予測不可能な政治リスクが、長期的な需要回復シナリオに影を落とす中、東京エレクトロンの経営のかじ取りは、かつてないほどの難しさを増していると言えるでしょう。

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