化学業界に多大な貢献をされた、JSR株式会社の元社長である故・吉田淑則氏を偲ぶ「お別れの会」が、2019年7月30日正午より東京・帝国ホテルにて執り行われることが決定いたしました。同氏は、日本合成ゴム(のちのJSR)に入社されて以来、研究開発部門を長きにわたり牽引され、特に半導体材料やディスプレイ材料といった高機能化学品の分野で、JSRを現在の成長へと導いた立役者の一人でいらっしゃいます。日本の産業界にとって、極めて重要な人物の功績を改めて振り返る機会となるでしょう。
吉田氏は、1964年に日本合成ゴムにご入社され、技術者としてのキャリアをスタートされました。その後、取締役研究開発本部副本部長や四日市研究所長を歴任され、1997年には専務取締役として電子材料事業と光学材料事業を担当されました。この時期は、まさに現代社会の基盤を築く半導体や液晶ディスプレイの技術が急速に進展した時代であり、同氏の先見の明と研究開発への情熱が、JSRの大きな飛躍の原動力となったのです。1990年代から2010年代にかけて、JSRの売上と利益が劇的に伸びた背景には、同氏が手がけられた数々の革新的な事業開発が存在しています。
同氏の特に大きな功績としては、ディスプレイの画質を左右する「液晶配向膜」や、熱可塑性樹脂である「アートン」などの事業化が挙げられます。これらの開発に対する貢献は高く評価され、1995年には市村産業賞、1994年には高分子学会賞を受賞されるなど、業界内での権威も揺るぎないものでした。私たち現代の生活に不可欠なスマートフォンやパソコン、テレビといった製品の進化は、同氏が生み出された電子材料と光学材料の技術革新なしには実現しなかったと言っても過言ではないでしょう。この功績は、日本の科学技術史においても特筆すべきことです。
吉田氏の訃報や「お別れの会」の報せに対しては、SNS上でも大きな反響が見受けられました。化学業界関係者の方々からは、「日本の先端材料開発を支えた偉大な経営者だった」「研究者出身の社長として、常に技術の重要性を説かれていた」といった、同氏のリーダーシップと技術者としての視点を讃えるコメントが多数寄せられています。また、JSRの株主や社員の方々からも、感謝と哀悼の意が表明されており、その影響力の大きさがうかがえます。故人のご遺志を受け継ぎ、今後も日本の素材産業が発展していくことを強く願うばかりです。
半導体材料の革新—吉田氏が築いた技術の基盤
吉田氏の指導のもとで注力された電子材料事業の中核の一つが、半導体製造に使われるフォトレジストです。フォトレジストとは、半導体の集積回路を形成する際に、回路パターンを基板に焼き付けるための感光性樹脂のことであり、その性能が半導体の微細化、つまり高性能化の鍵を握る専門的な化学品を指します。同氏は、このフォトレジストをはじめとする高純度で高性能な先端材料の開発に尽力されました。このような専門性の高い分野で世界的な競争力を維持できたのは、同氏の強い推進力と、研究開発への惜しみない投資があったからに他なりません。
私見ではございますが、JSRが現在もグローバルな化学企業として存在感を示せているのは、吉田氏が社長を務められた時代に、石油化学製品という既存の事業基盤がありながらも、未来を見据えて高付加価値な電子材料・光学材料分野へと事業の軸足を移すという、大胆かつ適切なポートフォリオ転換を図られた結果であると考えております。この事業の変革こそが、同氏の経営者としての最も評価されるべき手腕だったのではないでしょうか。この「お別れの会」は、その偉大な功績を讃えるとともに、同氏が遺された技術者魂と、未来へのビジョンを改めて噛みしめる機会になるでしょう。
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