日本企業は今、プラスチックごみ、いわゆる廃プラの削減に本格的に乗り出しています。この動きの背景には、廃プラ問題が「ESG(環境・社会・ガバナンス)」投資における重要なテーマになるという強い危機感があるからに他なりません。飲料や食品など、多くの包装容器を使用する大手メーカーが、容器のリサイクル推進や、環境負荷の低い植物由来素材への切り替えを急いでいる状況で、この取り組みはもはや待ったなしの経営課題と言えるでしょう。
特に注目されるのは、企業間の連携による革新的なリサイクルシステムの構築です。日本コカ・コーラは、消費者に向けたリサイクルの「見える化」に着手しました。具体的には、セブン&アイ・ホールディングスと連携し、2019年6月10日から、使用済みペットボトルを100%リサイクルした素材でできた共同企画商品「一(はじめ)緑茶 一日一本」を発売しています。これは、セブン-イレブンなどの店頭で回収したペットボトルを、再び商品として店頭に並べる「ボトルtoボトル」と呼ばれる取り組みであり、小売チェーンとメーカーが回収から商品化までの仕組みを協働で実現した国内初の事例となりました。
この取り組みは、消費者が持ち込んだペットボトルが、実際に新しい商品として生まれ変わる過程を身近に感じてもらうことで、リサイクルへの意識と回収率を高めることを狙っています。日本コカ・コーラのホルヘ・ガルドゥニョ社長が「環境問題はひとつの企業では解決できない。様々な連携を広げていきたい」と述べているように、小売とメーカーの協力によって、リサイクルに必要な使用済みペットボトルの安定確保が期待されます。環境対策は、単なるコストではなく、企業価値を高めるための投資という認識が強まっているのでしょう。
キリンホールディングスの子会社であるキリンビバレッジも、2019年6月半ばから「生茶 デカフェ」に、使用済みペットボトルを再生したボトルを採用し、「R100」の表示をパッケージに掲げました。これは、再生プラスチックを100%使用していることを示しています。同社では、国内での再生プラスチック使用量を2027年までに50%に高める目標を設定していますが、キリンビバレッジの堀口英樹社長は、消費者における廃プラへの関心が2018年夏ごろから急速に高まったと分析しています。
再生プラスチックの使用率が現在約2%程度と、国内飲料大手の中で出遅れていることを認識しつつ、50%達成に向けた取り組みを加速させています。しかし、堀口社長は、課題として使用済みボトルをボトルの原型などに再生する国内の企業や生産設備の不足を挙げており、商業レベルで実用化している循環システムが実質2社程度にとどまっている現状に警鐘を鳴らしています。そのため、堀口社長は「(販売で競争関係にある)何社かの飲料メーカーと協調して取り組む可能性はある」と述べ、業界を越えた連携が必要であるとの認識を示しています。
アサヒグループホールディングス子会社のアサヒ飲料は、2018年に米アマゾンのオンラインストアで、ラベルを使用しない「ラベルレスボトル」として宅配商品を発売しました。これは、通常ラベルに記載されるブランド名や原材料名などの表示を、外装の段ボール箱にまとめて表記することで、消費者のラベルを剥がす手間を省き、プラスチックごみの削減にも貢献する画期的な試みです。現在では水やお茶、乳酸菌飲料など、対象商品群を広げており、手軽さと環境配慮を両立させた商品としてSNSでも高い反響を集めていることでしょう。
🍜即席麺業界も「バイオマス由来」へシフト!コストを抑える工夫とは
年間に500種類もの新商品が登場すると言われる即席麺市場においても、廃プラ問題は避けられないテーマです。国内最大手の日清食品ホールディングスは、即席麺などの研究施設「the WAVE」(東京都八王子市)の容器チームが研究を重ねています。同社は、2021年度までに主力商品「カップヌードル」の全容器をバイオマス由来、つまり、サトウキビなど植物性の資源から作られたプラスチックに切り替えることを決定しました。
2019年12月の生産分から、サトウキビを原料とする植物性プラスチックを包装材料の一部に採用し、バイオマス由来の素材比率を7割から8割に高める計画です。一般的にバイオマスプラスチックは石油由来の素材よりも割高になりがちですが、包装資材メーカーと連携し、成分の配合比率などを工夫することで、コストを既存容器と同等レベルに抑えることに成功しています。しかし、これ以上のコスト増は企業努力だけでは難しくなるという見解です。
日清食品ホールディングスの安藤宏基社長は、「地球温暖化など社会課題を解決するためには、コスト増を消費者に理解してもらう必要がある。それが言えない弱いブランドは淘汰されていく時代に突入する」と断言しています。これは、環境対策をブランドの差別化要因とし、消費者の理解を得ることで、持続可能な経営を目指すという、強いリーダーシップの現れと言えるでしょう。
🌎グローバル基準での環境対応へ:ESGとサステナビリティーの重要性
かつて環境問題対策で先進的とされてきた日本ですが、プラスチックの再生技術やシステムにおいては出遅れが指摘されています。国内で処理できない廃プラの受け入れ先問題も重荷となっており、この問題に今、正面から取り組まなければ、グローバル競争から取り残される可能性が高いでしょう。サントリーホールディングスの新浪剛史社長は、2018年秋に米国へ出張した際、ストローが紙製に置き換わっている現状を目の当たりにし、特にニューヨークやカリフォルニアなど、住民の環境意識の高さに衝撃を受けたと言います。
欧州では、現地の企業を中心に社会との共生を重視する長期的な経営の視点が根付いています。国際会議であるスイスのダボス会議(世界経済フォーラム)でも、近年ではESGが主要議題に数多く上るようになりました。国際社会が厳しい目を向け、海洋に流出する廃プラが年間800万トンにも上る中、中国が2017年に廃プラの輸入を禁止するなど、世界的な規制強化の流れは加速しています。
2019年6月16日に閉幕した20カ国・地域(G20)エネルギー・環境相会合でも、廃プラ削減に向けた国際枠組みの新設を盛り込んだ共同声明が採択されており、国際協調の動きが進んでいるのが現状です。サントリーの新浪社長は、「(社会に対する)サステナビリティー(持続可能であること)を企業がコミットしなければいけない時代が既に来ている」と述べ、この10年間で流れが大きく変わったことを実感されています。
飲料や食品メーカーは、気候変動やカーボンプライシング(炭素の価格付け。二酸化炭素排出に価格をつけ、排出削減を促す政策)のリスク、さらには農作物や水資源の安定確保といった潜在的な経営リスクを抱えています。これらの問題は自国のみならず地球規模で顕在化する恐れがあるため、日本の企業もグローバル企業として社会的責任を果たすことが強く求められているのです。環境対策は、企業の未来を左右する重要な戦略と位置づけるべきで、このESGの波に乗れるかどうかが、今後の企業成長の鍵を握るでしょう。
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