2019年6月28日に発表されました富士電機の重要な人事異動と機構改革は、同社の今後の事業戦略を明確に示すものといえるでしょう。特に「パワエレシステム」というキーワードが示すように、社会のエネルギー構造変革に対応する体制への集中が鮮明に見受けられます。この大規模な組織再編は、同年7月1日付で実施されています。本記事では、この注目の人事を深掘りし、富士電機の描く未来図を読み解いていきます。
今回の組織再編の最大の焦点は、「パワエレシステムインダストリー事業本部」「発電プラント事業本部」「電子デバイス事業本部」という主要な3事業本部における変革です。まず、パワエレシステムとは、電力の変換や制御を行う技術・システムを指す専門用語で、エネルギーを効率よく利用するために不可欠な中核技術です。この分野での競争力を高めるため、パワエレシステムインダストリー事業本部では、オートメーション事業部において、システム技術をより専門化・細分化し、新たに「システム営業技術」に安西信公氏、「FA・システム技術第三」に長浜秀昭氏、「FA・システム技術第四」に星野淳氏が就任されています。
さらに、同事業本部では、組織の構造的なテコ入れも行われています。具体的には、オートメーション事業部に「システム技術第四部」を新設する一方、「ドライブ・モーション技術部」を廃止し、これまでの技術的な知見を「技術第二」として林寛明氏の管理下に再編したと推察されます。また、地域戦略についても、パワエレシステムエネルギー事業本部と共通で、「東南アジア事業戦略室」を「アジア事業戦略室」に改称しており、より広範なアジア地域全体を視野に入れた事業展開を目指す強い意思が感じられます。
エネルギー社会の未来を担う「発電プラント事業本部」の大胆な再編
社会のエネルギー転換が加速する中、特に大規模な変革が見られるのが「発電プラント事業本部」です。ここでは、新規事業への積極的な取り組みとサービス体制の強化が柱となっています。事業統括部では、部長である山本陽一郎氏が新たに「新事業開発」を兼務されており、新市場の創出にかける期待の大きさがうかがえます。また、新エネプラント事業部長を務めていた北西啓一氏は、新たに設置された「エンジニアリング統括部長」に就任しています。
このエンジニアリング統括部には、「電気制御システム部」が新設されました。これに伴い、発電事業部の「火力・地熱プラント電気制御システム部」は廃止され、電気制御の技術がエンジニアリング全体に統合される形となっています。北西氏の統括部には、これまでの新エネプラント事業部が担っていた「太陽光・風力発電技術部」や、次世代エネルギーとして期待される「燃料電池技術部」なども移管されており、これまでの知見を集約し、総合的な技術開発を推進していく体制が整えられたといえるでしょう。
また、顧客接点を強化する動きとして、「サービス統括部」も新設され、営業統括部副統括部長を兼務していた庄司克敏氏が統括部長に就任されています。このサービス統括部には、「火力・地熱サービス技術部」が設置され、山崎勝氏が着任。加えて、発電事業部の「火力・地熱プラントサービス部」を移管し、「サービス企画室」を統合するなど、技術開発からアフターサービスまでを一貫して提供できる、強固な体制が構築された模様です。これらの動きから、富士電機が「発電プラント」を、単なる設備の提供ではなく、長期的なサービス・ソリューションを提供する事業へと変革させようとしていることが明確に見て取れるのではないでしょうか。
「電子デバイス事業本部」の最先端技術への集中投資と体制刷新
デジタル社会を支える基盤技術である「電子デバイス事業本部」でも、未来に向けた重要な一手が進められました。ここでは、新たな材料技術への集中と、市場の需要に応える商品企画力の強化が図られています。開発統括部では、木村浩氏が「SiC開発部」から新設された「先端デバイス開発部」へと異動されています。この「SiC(炭化ケイ素)」は、従来のシリコンに代わる次世代の半導体材料であり、電力損失が少なく、高温での動作に優れるという特性を持つ、省エネルギー社会の実現に不可欠な技術です。SiC開発を発展的に解消し、先端デバイス開発という名称を冠することで、同社がこの分野での技術革新をさらに加速させていく姿勢を示しているといえるでしょう。
また、商品ラインアップの刷新に向けた動きも活発化しています。産業事業部の「産業ディスクリート」を担当されていた太田裕之氏は、新たに設置された「商品企画部」に着任されています。ディスクリートとは、半導体の個別部品(トランジスタやダイオードなど)を指します。一方、産業事業部では、木内伸氏が電装事業部から異動し、「産業ディスクリート」を担当。逆に、電装事業部の「電装ディスクリート」には、西尾実氏が着任されています。これらの人事異動は、マーケットのニーズを的確に捉え、最先端の電子デバイスを迅速に商品化する強力な体制構築を意図したものと考えられます。
この一連の組織再編は、SNS上でも「未来のエネルギー分野に注力しているのがよくわかる」「SiCを先端デバイス開発に格上げしたのが熱い」といった好意的な反響が見られ、富士電機の戦略的な事業強化に対する期待が高まっているようです。製造現場を支える「生産・調達本部」では、工場管理に木村芳秀氏が就任されるなど、基盤となる生産体制の強化にも抜かりはありません。2019年7月1日からの新体制は、同社がパワエレ技術を軸に、次世代の産業・エネルギー・社会インフラを支えるリーディングカンパニーとしての地位を確立していくための、非常に戦略的かつ大胆な一歩となるでしょう。
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