東日本大震災からの復興に向けて、東北の三陸地域が産み出す水産物および水産加工品の輸出が、今、官民一体となって力強く加速しています。この動きを牽引しているのが、三陸の優れた商品を世界に届けることを目的に設立された地域商社です。特に三陸コーポレーション(仙台市)や、東北・食文化輸出推進事業協同組合(宮城県名取市)といった組織が、海外の展示会への参加を精力的に増やし、新たな市場の開拓に挑んでいる状況です。震災から立ち直りつつある水産業のさらなる活性化は喫緊の課題であり、こうした民間主導の取り組みを、東北経済産業局も積極的に支援し、2019年6月には、水産業活性化に向けた提言を発表するなど、官民を挙げた推進体制が整いつつあると言えるでしょう。
この輸出戦略の要となるのが、2016年に設立された三陸コーポレーションです。同社は、水産加工の阿部長商店(宮城県気仙沼市)グループ会社など計8社が出資し、三陸水産物の輸出促進を担ってきました。これまでもマレーシアやタイなどの東南アジア地域を中心に、カキやイクラといった主力商品を輸出し、実績を積み重ねてきたところです。そして、2019年度からはさらに攻勢を強め、インド、オーストラリア、ロシアといった広範な国々で開催される食品見本市への出品を決定し、販路の大幅な拡大を目指す方針です。
輸出拡大の起爆剤として期待されているのが、阿部長商店グループが2018年に海外向けに開発した魚肉ソーセージです。この製品の最大の特長は、イスラム教の戒律に沿った商品であることを示すハラル認証を取得している点でしょう。ハラル認証とは、イスラム法に則って製造・加工された食品や製品に与えられるもので、豚肉やアルコールを含まないことが求められます。ムスリムが多い国々への輸出には必須であり、この認証があることで、マレーシアでの2019年4月の発売に続き、8月にはインドへ、さらに9月にはシドニーとモスクワでの販売展開を計画しているのです。
この魚肉ソーセージは、常温で2年間という長い賞味期限も持ち合わせており、また、肉を使用した製品と比較してカロリーが抑えられるため、イスラム教国だけでなく、健康志向の高いオーストラリアやロシアといった市場でも、高い需要が見込めます。同社は、この製品で2020年度中に3億円の売上達成という非常に意欲的な目標を掲げているそうです。SNSでは、「ハラル認証対応の魚肉ソーセージは画期的!」「常温保存できるなら海外旅行にも便利そう」といった、その将来性に期待する声が上がっており、国際的なニーズに応える商品開発が、三陸水産物の復興を力強く後押ししてくれるでしょう。
世界市場を見据えた商品開発と新たな販路
三陸コーポレーションの取り組みは、単なる既存品の輸出に留まりません。海外の市場動向やニーズを深く掘り下げ、それに応じた新商品の開発提案も積極的に行っているのです。例えば、シンガポールなどで人気を集めているサケの皮を揚げたチップスに注目し、出資企業の一つである国洋(岩手県大船渡市)に開発を依頼しました。このチップスは、ゆずこしょうやワサビじょうゆなど和風の味付けを施し、年内の発売に向けて準備を進めている段階です。これは、三陸の新鮮な素材と日本の食文化を融合させ、新たな価値を生み出すという素晴らしい試みだと感じています。
一方、東北各地の農水産物の輸出に尽力している東北・食文化輸出推進事業協同組合も、新しい市場の開拓を進めています。これまでタイやシンガポールといった国々でカキなどの水産物を中心に輸出を手掛けてきましたが、2019年からは新たにベトナムの食品見本市への出品を始める運びとなりました。これは、組合員企業である水産加工のヤマナカ(宮城県石巻市)がベトナム国内に持つ既存の販路を活用することで、効率的な市場参入を目指す戦略です。同組合には、仙台国際空港(宮城県名取市)をはじめ、東北の水産加工会社や食品会社など約30社が加盟しており、多様な連携を通じて輸出拡大を加速させるでしょう。
これらの動きは、東日本大震災によって大きな打撃を受けた三陸の水産業が、国内市場の縮小という現実を乗り越え、世界市場への挑戦という形で力強い復興の道を歩み始めていることを示しています。ハラル認証の取得や海外ニーズに合わせた商品開発といった、戦略的で柔軟な取り組みは、単に経済的な成功をもたらすだけでなく、三陸の「今」を世界に発信するブランド力の向上にも繋がっていくに違いありません。官民一体となったこの輸出推進の波が、三陸の豊かな恵みを世界中に広め、地域のさらなる発展と復興を確実なものにすると期待してやみません。
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