世界中で急速に広がりを見せている感染症の影響は、世界の工場とも呼ばれる中国の産業界に対しても大きな打撃を与えています。かつてない外需の縮小に伴い、幅広い業種で深刻な人員削減や大幅な給与カットといった調整圧力が強まっており、雇用情勢の冷え込みが顕著になっています。
特に中国の基幹産業の一つである自動車分野では、現場での苦境が明確に表れています。中堅メーカーである江鈴控股では、最大で30%に達する賃金削減が行われました。大手メーカーの上海汽車集団でも子会社で業績に連動する手当が削減されるなど、厳しい収益管理が余儀なくされています。
製薬業の亜宝薬業でも給与削減が提示されたほか、中古車売買プラットフォームの優信集団や雑貨ショップを展開する名創優品など、内需や流通を支える有名企業までが給料の引き下げ措置を講じています。事業の縮小に伴う雇用縮小の波は、いまや特定の地域や業界にとどまらない深刻さを見せています。
企業が人員そのものの整理を進める動きも加速しています。大手広告企業である新潮伝媒では全体の1割にあたる500人規模の削減を決定しました。さらに不動産業の中迪禾邦や民泊プラットフォームの途家、格安ホテルチェーンを展開するOYOの中国法人など、サービス業を中心にリストラ策の検討が進んでいます。
求人現場の冷え込みと高まる就職のハードル
求人現場の激変ぶりは数字にも如実に表れています。2020年03月27日に江蘇省蘇州市の蘇州工業園区人材センターで開催された採用フェアでは、参加した企業の数が約80社にとどまりました。これは前年同時期の約150社と比較すると、およそ半分にまで激減した形となります。
単に参加企業が減少しただけではなく、採用条件の要求水準が大幅に高くなっている点も求職者にとっては大きな壁となっています。以前であれば未経験者の積極採用や寮の完備を条件に掲げる企業が多く見られましたが、現在は品質管理をはじめとする即戦力の職務経験が必須とされる傾向が強まっています。
広東省東莞市などの輸出産業が集積する地域においても、求人数は前年の半分以下に減少しました。2020年02月中旬の段階で製造業の操業自粛が解除された直後は、操業再開に向けた人手不足を補う目的で積極的な採用活動が見られたものの、海外における需要の冷え込みに伴い需要は急低下しています。
求職活動が難航している労働者からは、突然の解雇や長期の自宅待機を余儀なくされたという切実な声が漏れています。ネット上のSNSでも「以前なら選べたはずの仕事が見つからない」「明日からの生活費をどう工面すればいいのか」といった将来への大きな不安を吐露する書き込みが相次いで拡散されています。
過去最高水準を記録した失業率と国家の課題
マクロ経済の視点から見ても情勢は非常に厳しい段階に入っています。中国公表データによると、都市部の完全失業率は2020年02月の段階で6.2%まで大幅に悪化しました。この数値は2018年に公表形式が統一されて以降、最も高い数値を更新しており、雇用の急激な悪化を示す決定的な指標となっています。
ここで使われる完全失業率とは、働く意欲を持ちながらも職を得られていない人の割合を示す基本的な経済指標です。この数値の跳ね上がりは、働く意志を持つ多くの人々が市場から押し出されてしまった実態を明瞭に証明しています。
事態を重く見た当局は、失業保険料の一部返還や助成金の提供を通じて企業側へ雇用の維持を強く働きかけています。政府からの各種インセンティブを通じて人員削減を抑制する狙いですが、グローバルな需要低迷の勢いは凄まじく、個企業の力だけでは吸収しきれないのが実情と言わざるを得ません。
新卒市場においても懸念が残ります。年内には870万人を上回る新卒の大学卒業生が本格的な就職活動の時期を迎える見込みです。世界的な感染症の流行収束が見通せない中での大規模な若年雇用の流入は、今後の経済成長における最大の不安要素になり得るでしょう。
今回の雇用動向は、過度なグローバルサプライチェーンへの依存がもたらす脆さを浮き彫りにしました。内需の拡大や持続可能な労働環境の再構築を進めない限り、外的ショックに対する脆弱性を克服することは容易ではありません。市場の早期回復に向けた実効性のある政策が強く望まれています。
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