2019年6月27日、米国のツイッター社は、政府関係者や選挙活動中の人物による投稿に不適切な内容が含まれる場合、ユーザーに事前警告を表示する新たな制度を導入すると発表いたしました。この決定は、トランプ米大統領をはじめとする世界中の著名な公人がメッセージを発信する主要な舞台となっている同社のSNSが、来るべき米大統領選挙を前に、有権者を混乱させる可能性のある情報の拡散を阻止しようという強い意志の表れだと私は考えます。ツイッターは、この慎重な措置を通じて、健全な公共の言論と、プラットフォームの社会的な責任という、両立が困難な課題への答えを見つけようとしているのでしょう。
この「警告」の対象となるのは、政府関係者や公職に就くための選挙活動中の人物、あるいは近いうちに政府で地位に就くことが決まっている人などに限定されます。さらに、10万人を超えるフォロワーを有し、ツイッターの公認アカウントを保持していることが条件となりますので、影響力の非常に大きな公人による発言に絞った対策であると言えるでしょう。この制度は日本を含む世界中で即日実施されましたが、2019年6月27日以前の過去の投稿には適用されません。SNSが持つ影響力の増大とともに、その責任が問われる時代に入ったことを象徴する出来事として、注目すべき動きです。
具体的には、人種差別や暴力をあおるような投稿など、ツイッターの規定に反していると判断されたコンテンツに対し、ユーザーが内容を読む前に「ツイッターの規定に反している」という趣旨の警告文がSNS上に表示されます。しかし、これらの投稿は「残すことが公益に値する」という判断のもと、削除はされません。ユーザーは警告を理解した上でクリックすれば、投稿の内容を読むことが可能です。これは、言論の自由を最大限に尊重しつつ、不適切な情報の拡散を抑制しようという苦肉の策であり、一石を投じるものだと評価できるのではないでしょうか。
この制度導入の背景には、ツイッターがこれまで、国の指導者や公人の考えを示す投稿は「健全な公共の言論に必要不可欠」として、規定に反する内容であっても削除に極めて消極的であったという経緯があります。特に米国では、憲法で表現の自由が強く認められています。しかし、公職にある人物の発言によって社会的な混乱が生じる危険性があるため、市民団体などから規制を求める批判の声が高まっていました。今回の措置は、表現の自由の精神を残しつつ、SNSの社会責任を優先させた、非常にバランスの取れた対応だと感じます。
しかし、この新しい制度には課題も残されています。ツイッターは、具体的にどのような投稿が警告対象となるかについては「予測できない」としています。同社の投稿規定では、「特定の人物への嫌がらせ」や「他者への威圧や発言への抑制」、「人種や民族、性的指向などを理由とした他者への暴力行為や嫌がらせの助長」、そして「他者の尊厳を低下させる」ことなどが明確に禁じられていますが、これらの規定に照らして「何が不適切な投稿なのか」をプラットフォーム側がどのように判断し、線引きするのかという点は、引き続き議論の的になるでしょう。
米メディアのワイアードなどでは、フォロワー数が約6,100万人にも上るトランプ米大統領の過去の投稿の一部が、ツイッターの規約に反していると報じられております。ツイッター社は具体的な投稿者の名前こそ明かしていませんが、2020年の大統領選が迫る中で、トランプ氏や他の主要候補者の投稿がこの新制度によってどのように扱われるのかに、大きな注目が集まることは間違いありません。
SNSの社会責任と今後の動向
SNSの社会責任が問われるという点では、同様の課題に直面している米フェイスブック(Facebook)も興味深い動きを見せています。フェイスブックは、ユーザーとプラットフォームの間で意見が対立しそうな投稿に関して、判断を第三者機関に委ねる仕組みを模索しているとのことです。これは、プラットフォームの主観的な判断ではなく、中立的な立場からの客観的な評価を得ることで、「表現の自由」と「プラットフォームの責任」のバランスを図ろうとするアプローチであり、ツイッターの今後の運営にも示唆を与えるものとなるでしょう。
私は、影響力を持つ公人の発言に一定の歯止めをかける今回のツイッターの決断は、健全な民主主義と情報社会の維持のために、非常に重要であると考えます。SNSが単なる情報発信のツールに留まらず、社会のインフラとしての役割を担う今、不適切な情報の拡散を防ぐことは企業の責務です。しかし、その判断基準の透明性と公平性をどのように確保していくのかが、今後、ツイッターに課せられた最大のミッションであると言えるでしょう。世界中が、この新たな試みの行方を見守っていくことになります。
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