世界的なタイヤメーカーとして知られるブリヂストンが、2019年7月を主軸とする人事を発表しました。この人事は、同社が推進する「ソリューション(SL)」事業の強化と、「デジタルトランスフォーメーション」への取り組みを加速させる意図が明確に読み取れる内容となっています。特に、先端技術戦略、SL・IoT開発、SL・AI開発といった、未来の成長を担う部門で新たな執行役員やキーパーソンが登用されており、経営層の本気が伺えます。この大胆な体制変更は、単なる組織の入れ替えではなく、デジタル技術を活用して顧客の課題解決に貢献するビジネスモデルへの変革を象徴していると言えるでしょう。
今回の人事異動で特に注目したいのは、執行役員 田村康之氏の「先端技術戦略」への就任です。これは、同社が競争優位性を確立するために、最先端の技術をどのように経営戦略に組み込んでいくかを司る極めて重要な役割を担うことになります。また、「SL・IoT開発」には羽根田知幸氏、「SL・AI開発」には花塚泰史氏がそれぞれ着任しました。ここで言う「SL」とは、単に製品を販売するだけでなく、顧客の抱える問題やニーズに対し、製品、サービス、技術を組み合わせて提供する「ソリューション」を意味しています。IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)といったデジタル技術は、このソリューション事業を高度化し、効率的かつ個別最適化されたサービス提供を実現するための基盤となるため、これらの開発部門への人材投入はまさに企業戦略の根幹を支える動きと言えるでしょう。
さらに、組織全体のデジタル化推進も強く意識されています。「事業開発企画」の分野では、デジタル戦略企画の経験を持つ本間哲氏が就き、新しい事業の種をデジタル技術と結びつけて生み出す役割が期待されます。また、「デジタル・IT戦略企画」には高橋将之氏が配され、全社的なIT戦略とデジタル活用の道筋を描くことになります。これらの異動は、企業全体としてデジタル技術を最大限に活用し、業務プロセスの効率化、新しい価値創造、そして市場での優位性の確立を目指すという、強い決意の表れです。SNS上でも、「ブリヂストンが本気でデジタル企業へと変わろうとしている」「タイヤだけでなくデータ活用でビジネスが変わる」といった、変革への期待感を示す投稿が見受けられ、今回の人事が業界内外で大きな反響を呼んでいることが分かります。
製品の品質と生産体制の強化にも抜かりはありません。「品質経営認定・監査推進」には小嶋照彦氏、「生産統括第2」には一瀬秀之氏、そして「コーポレート技術サービス」には石井茂雅氏が新たに担当されます。長山賀一氏は、そのコーポレート技術サービスの経験を活かし、「日本タイヤバリューチェーン品質統括部長」へと異動し、国内のタイヤ事業における品質全体の管理を担います。さらに、久留米工場では2019年7月15日付で入江智祐氏、7月下旬には長家陽一氏が製造部門に着任するなど、国内外のモノづくり基盤を支える現場の強化も同時に進められている状況です。タイヤメーカーとしての信頼の根幹である「品質」と「生産」を守りながら、未来に向けた挑戦を進めていくという、ブリヂストンの堅実かつ革新的な経営姿勢が垣間見えます。
私見として、これだけ多くの部署で「SL」や「デジタル」に関連する名称が見られる人事は、ブリヂストンが単にタイヤを製造・販売するメーカーという枠を超え、モビリティ社会の課題を解決する「ソリューションプロバイダー」へと変貌を遂げようとしていることを示しています。特に、タイヤにセンサーを搭載して走行データを収集・分析し、最適な交換時期やメンテナンス方法を提案するなど、製品とサービスを融合させたビジネスモデルは、これからのモビリティ産業の主流となるでしょう。この2019年7月の体制強化は、その未来を見据えた布石であり、同社の持続的な成長に向けた、極めて重要な一歩になるに違いありません。今後のブリヂストンの「デジタルトランスフォーメーション」が、いかに社会に新しい価値を提供していくか、大いに注目していくべきでしょう。