2019年6月の日本株市場は、月間で見れば日経平均株価が674円73銭(3.3%)高と、2カ月ぶりの上昇を記録しました。しかし、この数字の裏側では、市場のエネルギーが著しく低下している状況が見て取れます。特に注目すべきは、東京証券取引所第1部(東証1部)における1日当たりの売買代金が、2014年8月以来、実に4年10カ月ぶりの低い水準に落ち込んだことです。これは、市場参加者がいかに様子見の姿勢を強めていたかを物語っています。
この異例の「静けさ」の背景には、主に海外投資家による慎重なムードが深く関わっています。要因の一つとして、月末に控える米中首脳会談の結果を見極めたいという思惑が挙げられます。世界経済の動向を左右する米中間の貿易摩擦がどうなるか、その不透明感が市場の活力を奪ってしまったのです。さらに、米国での利下げ観測が強まったことで、相対的に円高が進む可能性が高まり、これが日本株が海外株に比べて買われにくい状況を生み出しています。
具体的に東証1部の1日当たり売買代金を見てみると、前月比で21\%$も減少し、$1$兆$9165億円にとどまりました。投資部門別の売買動向を分析すると、6月21日までの時点で、海外投資家の1日当たりの売買代金が前月に比べ2割強も減少していることが判明しています。これは、日本株の売買を主導する海外勢が、文字通り「手を引いた」状態であることを示しており、市場の冷え込みに直結しているといえるでしょう。
特に売買代金の減少が顕著だったのは、海外株主が多い銘柄です。東証株価指数(TOPIX)500採用銘柄の中で、前月比で売買代金の減少額が大きかったランキングには、ソニー、ZOZO、武田薬品工業、村田製作所、ソフトバンクグループといったグローバル企業が並びました。これは円高懸念が高まる中で、海外投資家が日本株を物色の対象から外しやすくなった傾向を強く裏付けているといえます。
金利低下の恩恵が限定的だった日本市場の特殊事情
本来、欧米市場では長期金利が低下すると、年金基金などが相対的に魅力が低下した債券から、収益機会のある株式へと資金をシフトさせる動きが見られます。しかし、日本市場ではこのメカニズムが十分に機能しなかったという指摘があります。インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストによると、「日本は長期金利の低下幅が小さく、債券から株式への十分な資金流入が起こらなかった」というのです。この「長期金利の低下幅」とは、長期の国債などの利回りの変動幅のことで、この変動が小さすぎたため、投資家がわざわざリスクを取って株式に資金を移す動機が生まれなかったということでしょう。
この市場の冷え込みは、新興市場にも波及しています。東証マザーズ市場と東証ジャスダック市場を合計した1日当たりの売買代金は1352億円となり、2016年11月以来、2年7カ月ぶりの低水準を記録しました。SBI証券の雨宮京子シニア・マーケットアドバイザーは、相場の変動(ボラティリティ)が乏しいため、「下がれば買おうと構えている個人投資家も積極的に動けていない」と分析しています。このように、機関投資家だけでなく、個人投資家までもが市場に参入せず静観している状況は、今後の市場の動きに対して不安材料であると考えられます。
編集者として申し上げたいのは、現在の市場の「静けさ」は、単なる低迷ではなく、世界情勢に対する市場の「緊張感」の表れだということです。米中会談という大きなイベントを前に、投資家がリスクを極力避け、一旦資金を引き揚げているのは極めて合理的な行動でしょう。しかし、裏を返せば、会談の結果次第では、一気に市場に資金が戻り、株価が大きく変動する「マグマ」が溜まっている状態とも見なせます。読者の皆様には、この2019年6月の経験を糧に、不透明な時期だからこそ、その後の大きな変化に備えるための情報収集を徹底していただきたいものです。
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