⚠️ 中国減速が賃金に影? 2019年 中部主要企業59社の賃上げ率が2.36%に鈍化、トヨタグループも先行投資を優先

日本のものづくりを支える中部の主要企業の賃金が、伸び悩む傾向を示しています。日本経済新聞社が2019年5月13日時点でまとめた賃金動向調査の結果によると、中部地方の主要59社における2019年の賃上げ率は2.36パーセントとなり、前年実績の2.53パーセントから低下しました。賃上げ率の上位にはアイシン精機をはじめとするトヨタ自動車グループの企業が並んだものの、その大半の企業で前年の実績に届かないという、慎重な姿勢が浮き彫りになる結果となりました。

この賃上げ率の鈍化の背景には、企業の収益環境の不透明感があります。中部企業の2019年3月期決算は、企業全体の純利益(最終的なもうけ)が7年ぶりに前の期を下回るという厳しい結果となりました。特に、中国経済の減速といった世界的な要因により、各社の業績は2018年後半から落ち込みが鮮明になっています。この業績の落ち込みが、ちょうど労使間の賃金交渉が行われる時期と重なったことで、企業側が賃上げに慎重な姿勢を取らざるを得なかったと推察されます。

SNSでも、「中国減速の影響がここまで来ているのか」「大手でも賃上げが渋られるのは不安だ」といった、経済の先行きを懸念する声が多く見受けられます。長年、春季交渉の牽引役を果たしてきた製造業の賃上げ率が2.39パーセントと、前年の2.54パーセントから失速したことは、この慎重姿勢を裏付けています。特に、賃上げ率が最も高かった前年の3.3パーセントから、今年は3.01パーセントに留まったトヨタ自動車の動向は、象徴的だと言えるでしょう。

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危機感を強めるトヨタグループと次世代技術への巨額投資

トヨタ自動車は、2019年3月期に販売増と原価低減努力により、売上高が日本企業として初めて30兆円台を突破し、営業利益も増加しました。しかし、経営陣はむしろ強い危機感を抱いています。その危機感の源泉は、自動車業界が直面している**「CASE(ケース)」と呼ばれる次世代技術、すなわちConnected(コネクティッド化)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の実用化に向けた巨額の先行投資**が必要であるという現実です。

トヨタグループの研究開発費は右肩上がりに増加しており、豊田章男社長はインターネットで公開された労使交渉の場で、組合員らに対し「生きるか死ぬかの状況が分かっていないのでないか」と、厳しい言葉を投げかけられました。この社長の言葉は、今後の競争を勝ち抜くためには、短期的な賃上げよりも中長期的な技術開発を優先せざるを得ないという、企業としての切実な状況を表していると言えるでしょう。

賃上げ率の上位に名を連ねたアイシン精機、トヨタ紡織、愛知製鋼といったトヨタグループ各社においても、その大半が前年実績には届きませんでした。これは、グループ全体で未来への投資を優先し、足元の賃金水準を抑えるという、戦略的な判断が働いた結果であると推察されます。このことは、中部企業の経済全体における次世代技術へのシフトの重要性が、賃金交渉にも影響を及ぼし始めていることを示しています。

好業績を還元したオークマと人手不足の非製造業

一方で、製造業の中で最も高い賃上げ率3.32パーセントを達成したのは、オークマでした。同社は、主力の工作機械が中国経済減速の影響を受けているものの、前年上期までに積み上げていた受注残を順調に処理できたことで、2019年3月期の連結経常利益は前の期比で25パーセント増という好業績を収めています。この好業績を、従業員に素直に還元した形となり、製造業の中でも業績が堅調な企業は、賃上げに積極的であったことが分かります。

また、非製造業の賃上げ率は2.06パーセントと、前年の2.04パーセントをわずかに下回ったものの、大きな落ち込みは見られませんでした。特に、小売りなど人手不足が深刻な業種では、優秀な人材の確保と定着率の向上が企業の存続に関わる問題であるため、賃金を上げる傾向が見られました。愛知県に本社を置く食品スーパーでは、賃上げ率が前年より0.2ポイント上昇しており、こうした業種では、景気動向よりも労働市場の逼迫が賃上げの大きな要因となっていることが読み取れます。

今回の調査結果は、中部経済が大きな転換点に立っていることを示唆しています。国際的な景気減速と未来技術への投資競争という二つの波を受け、企業の賃上げマインドは慎重になりつつあります。しかし、好業績企業や人手不足業種では賃金上昇の動きも続いており、企業ごとの業績格差や産業構造の変化が、従業員の給与水準にも影響を与え始めていると言えるでしょう。

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