🍶栃木酒の新時代! 「下野杜氏」の情熱が切り拓く地酒の未来と全国評価

近年、日本酒業界で急速に評価を高めているのが、酒どころ栃木県です。その品質向上を牽引しているのが、2006年に認証制度が始まった「下野杜氏(しもつけとうじ)」の存在です。彼らは、古くは下野国と呼ばれた栃木の地に根ざした伝統的な酒造りの技術を継承しつつ、新しい酒文化を創造するという重要な役割を担っています。現在、栃木県酒造組合に加盟する蔵元では、かつて多数派だった越後杜氏や南部杜氏に代わり、下野杜氏が多数を占めるようになっており、2019年6月時点で23人が在籍しています。この若き杜氏たちの切磋琢磨が、栃木の地酒のクオリティーを押し上げている要因といえるでしょう。

その実力は国際的な舞台でも証明されています。例えば、益子町の外池酒造店では、2019年6月上旬に米ハワイで開催された「全米日本酒歓評会」にて、累計得点が最も高い蔵元に贈られる「エメラルド賞」という輝かしい賞を受賞しました。これに対し、下野杜氏1期生で井上清吉商店(宇都宮市)の社長である井上裕史氏は、「栃木の酒のクオリティーを証明してくれた」と、その成果を称えています。井上清吉商店の酒も、過去には世界最大級のワイン品評会である「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」日本酒部門で「チャンピオン・サケ」に選出されるなど、栃木の酒は世界で認められつつあります。このように、下野杜氏同士が互いに励まし合い、情報交換を重ねることで、より高いレベルの酒造りを目指す姿勢が、全体の品質向上に結びついています。

栃木の酒造りの魅力は、杜氏たちの**「自由な発想」にあると井上氏は説明します。各蔵元が個性的な挑戦を続けていることが、栃木の地酒の面白さを生み出しているのです。宇都宮市の街中に蔵を構える虎屋本店では、下野杜氏の天満屋徳氏(44)が、単一の酵母では出せない複雑な味わいを追求するため、「2種類の酵母をブレンドして使用する」という新たな試みを始めています。また、1673年創業という長い歴史を持つ第一酒造(佐野市)では、最多となる3名の下野杜氏が在籍し、蒸した米の冷まし方を見直すなど、細部にわたる工程の改善によって「よりきれいな酒」を生み出しています。

地域に根差した取り組みも活発です。井上清吉商店や宇都宮酒造のように、地元の酒米を積極的に活用する蔵元がある一方で、惣誉酒造(市貝町)のように、最高級の酒米として評価の高い兵庫県特A地区産の「山田錦」を原料の多くに取り入れる蔵元もあります。また、惣誉酒造では、昔ながらの製法である「生酛(きもと)仕込み」にも力を注いでいます。生酛仕込みとは、乳酸菌を自然の力で生成させ、天然の環境で酒母(酵母を培養したもの)を造る伝統的な手法のことで、手間はかかりますが、酸味と旨味が調和した奥深い味わいの酒が生まれることが特徴です。同社の秋田徹杜氏(49)は、他の蔵人にも積極的に下野杜氏の試験を受けてほしいと、次世代への継承にも意欲を示しています。

栃木県内の清酒の課税数量は2017年度で全国の約2%に過ぎませんが、その存在感を高めるカギは、「独自性の創出」**にあります。例えば、さくら市のせんきんでは、酸味を重視した酒造りを行い、地元の水田の水系にまでこだわっています。その個性的な酒造りが東京などでも人気を呼び、生産量を年間2000石(いっせん:1石は180リットル)にまで伸ばしました。また、東京などで高い人気を誇る「鳳凰美田」を醸す小林酒造(小山市)には下野杜氏はいませんが、ワイン酵母を用いるなどユニークな酒造りに挑戦しており、「いろいろな声(消費者の意見など)を開発に生かしたい」と小林正樹専務は述べています。

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地域一体の技術革新と未来への展望

こうした個性を生み出す取り組みには、栃木県も行政として深く関わっています。県産業技術センター食品技術部が実用化した**「栃木酵母」は、県内のほとんどの蔵元で使われています。酵母とは、日本酒の製造において、米の糖分をアルコールに変える微生物のことで、酒の香りや味わいを決定づける非常に重要な要素です。この独自酵母が、栃木らしい酒の個性を引き出す土台となっているのでしょう。さらに、県が開発したオリジナルの酒米「夢ささら」**を使った日本酒が、2019年に27の蔵元から一斉に発売されました。「夢ささら」は、大粒で心白が大きく、酒造りに適した特徴を持つ酒米で、2020年にはさらに販売量が増加する見込みです。

このような蔵元、杜氏、県が一体となった酒造りの革新は、まさに栃木の日本酒が新たな高みへと進化していく姿を示していると言えます。SNS上でも、栃木の酒は「フレッシュで洗練されている」「個性が際立っていて飲み飽きない」といった好意的な反響が多く、特に若者や海外の日本酒ファンからの注目が集まっています。栃木には「しもつかれ」などの素朴な郷土料理も多く、それらの食文化と、下野杜氏たちの情熱が込められた高品質な地酒とをセットでプロモーションすることで、地域全体の魅力発信にもつながるでしょう。栃木の酒造りは、伝統を大切にしながらも、革新を恐れない若き杜氏たちの手によって、今後ますます発展していくに違いありません。

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